中学生の頃、全国でも屈指の選手であり、県大会に出場するのは当たり前で、常に全国大会の常連。でも高校に入ると、調子が上がらず成績も低迷。
中学の頃の方が速く走れるし、スピード感がある。最近はスピード感が出ないし、どこか自分に遅さを感じる。
このようなことを経験し、悩んでいる選手がいました。日頃行う練習内容によって自分が持っている最大スピードを発揮できなくなることがあります。
理由はシンプルで、最大スピードで身体を動かすことをしなくなったから。今日は、以前はもっと速く動けたのに最近動きが鈍い。そう感じている方に向けてお伝えしていきたいと思います。
ざっと内容を知りたい方はこちら
スピードには2つの考え方がある
スピードとは、
- 速さ
- スピード
という2つの考え方を持つことができます。
速さについて
速さというのは、筋線維のタイプを指しており、自分が持つ筋肉には白筋が多いのか、赤筋が多いのか、自分が持つ筋線維のタイプによって生来的に筋肉が発揮できる収縮速度が決まってしまいます。
これは、変えることができない要素であり、言い換えると選手自身のセンス、と表現される一要素になります。
速さとは、筋線維のタイプのことであり、遺伝的に決まり、変えることのできない要素と覚えてもらえればいいかなと思います。
スピードについて
スピードについては、変えることのできる要素であり、これは動き、動作のことを指しています。最大スピードを発揮するひとつに、スムーズな動きをする必要があり、スムーズな動きをするためには、リラックスすることが求められます。
どうしても力んでしまう選手の場合、この身体の動かし方をスムーズにすることでスピードが向上します。
走り方や打ち方、投げ方などをどのように行うのか。そういったこと動きや動作のことを指しているのが、スピードです。
速さは遺伝的に決まるが、維持する必要がある
速さというのは、変えられないとお伝えしましたが、何のトレーニングしないままだと自分がもっている最大のスピードを発揮できなくなります。
どういうことかというと、一般の方であれば筋線維のタイプは白と赤、それぞれが5:5、もしくは4:6のぐらいの比率であり、だいたい同じぐらいの割合であると言われています。
これが生来的に極端に偏った選手がオリンピックなどの世界で勝負できる素材となります。もちろんこれだけではありませんが、これは非常に大切なことです。
一般の方は、白筋が5だとすると、ご自身の最大スピードは筋線維のタイプだけで判断すると5になるとします。
この持っている5というスピードを日頃運動もせず、1や2ぐらいのスピードでしか身体を動かさない場合、1や2の刺激に慣れてしまい、筋肉は5のスピードを出せなくなってしまいます。
これが運動会のときのお父さん。頭では速く動ける自分を想像していると思いますが、実際は筋肉がそのスピードについてこれない。日頃スポーツをしている選手もこれと同じことが起こる可能性があります。
今日最も大事なところはここになります。環境が変わったり、練習メニューが変わったことで、最大スピードで身体を動かすことが減った場合、以前よりも発揮できるスピードは遅くなります。
必ず、毎日筋肉に最大収縮速度を経験させることが重要です。遅いスピードの慣れてしまったら、そのスピードでしか身体は動かなくなってしまいます。
関連記事:速く走るためにはフォームをどう考える?実践から感じた走り方について
中学生から高校生になったときにタイムが落ちた
これは実際に相談に来られた方の例ですが、中学では全国でもトップクラスのタイムを出していた女子陸上長距離選手がいました。
この選手は高校生になってからあまりタイムが上がらず悩まれていました。
高校に入ってスピードに乗れなくなった
高校に入ってからはスピード感がない、弾む感覚があまりないといった感覚の違いが生まれていました。走り方にも問題がありましたが、一番問題があったのは、中学と高校での練習メニューの違いでした。
中学では、ハードな練習で全力で走ることも何度もあったそうですが、高校ではジョッグなどのメニューが増え、スピード練習がほとんどなくなったそうです。
全体練習でスピード練習がなく、自分でもそういう練習をしなかったため、遅いペースに身体が慣れてしまった可能性がありました。
陸上だけではなくスポーツ全般に共通すること
このように、陸上選手だけではなく、野球選手なども同じです。なんとなくバットを振り続けていくと、最大スピードでバットが振れなくなります。
最大スピードでバットを振るということは力むということとは別であり、リラックスした動作になります。その方がスピードが出ますし、スピードが出ると、ボールに対しての衝撃力も大きくなります。
走る、投げる、バットを振るなどさまざまな動作で、日頃から最大スピードを経験させておかないといざというときに最大スピードで身体を動かせなくなります。
そして遅いスピードに慣れてしまうと、動作は遅くなってしまいます。
このように遺伝的な要素で変えられないところもありますが、それを維持することはスポーツ選手にとっては非常に大切なことですので、ぜひ覚えておいていただきたいことです。
実際にどのようなことをすればいいのか?
わかりやすい例として、走るということは脚の筋肉を使います。本当は全身の筋肉を使っていますが、わかりやすくいうと脚の筋肉です。
走るということはほとんどのスポーツに共通する動作ですので、このスピードを維持させたい。そこで活用するのがラダーです。
ラダーは、マス目にいろんなバリエーションでステップを踏んでいきますが、より速く身体を動かし、筋肉に最大収縮速度を経験させます。
これをウォーミングアップのときなどに行い、維持する目的で行います。具体的に知りたい方はこちらを参考にしていただければと思います。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?スピードという要素には2つの考え方があり、速さとスピード。それらは変えられないものと変えられるもの。
変えられないけども、それを維持することが必要になります。そのためには、日頃から最大収縮速度を経験させることであり、その手段は競技によって異なります。
最大収縮速度を経験させるということは、力んで速く動かそうとするのではなく、リラックスした状態で動作がスムーズに動いた方がスピードが出ます。
身体の動かし方も重要ですが、日頃から最大スピードで身体を動かさないと、スピードは出づらくなり、遅いスピードで練習をし続けているとそのスピードに慣れてしまい動作が遅くなります。
最近スピードが出ないと悩んでいる方は、上記のような考え方で日頃の練習を振り返っていただくと何か気づくことがあるかもしれません。少しでも参考になればうれしく思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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