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ニ軸理論について-その1|ニュースレターNO.070

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二軸理論
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前回紹介しました書籍の中で、新しい運動原理として「二軸運動理論」を提唱しています、と紹介したところ、

『あまりに簡単に「一軸運動」「二軸運動」と二つに大別している考え方に違和感を感じる。それまでは非常に論理的な説明が多かったが、他の人の意見の引用や「偉い○○さんも良いと言っている」という説明が目につく。科学者としては少し、話の持って行き方が強引かな?と思われた。正直、この話の意味が理解できない。魚住先生にご解説いただければ・・』

というメールをいただきました。

そこで、ニ軸運動理論がどこから生まれたものであり、どのような考え方をするものなのかいろいろ調べてみました。私自身もメールをいただいた方と同様で、理解しにくい部分が多くありました。問題は、「軸」というものをどのように捉えるのかということにあると思います。

野球でのピッチングとバッティングの話し、そしてランニングの話が出てきますが、まず野球の動作での二軸理論について引き出してこられたところを見つけました。今回はまずその部分について紹介したいと思います。

「メジャーリーグvs日本野球」(大村皓一:講談社現代新書)という本があります。日本のCG(コンピュータ・グラフィックス)の開発者である大村皓一氏主宰による財団法人イメージ情報研究所大村グループが野球の身体動作の工学的研究を8年間行った結果、ピッチングやバッティングについて短い時間に最大限の加速度が得られる理由・原理が明らかになったそうです。

その研究結果から、メジャーと日本の代表選手のテクニックについて比較して書かれたものです。おそらく、この研究結果から野球動作の二軸理論が出たのではないかと思われます。

後1冊、「コーチ論」(織田淳太郎:光文社新書)という本があり、この中で二軸理論を提唱したという小山田氏の話が載っています。この2冊を読んでみましたが、理解の仕方に違いがあるようです。そこで、それぞれの考え方を比較していただけたらと思います。

 

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まず、「コーチ論」の中から;

『小山田は白分の息子を実験台として呼ぶと、私にこう言った。

「息子の胸を右の掌で突いてください。左腕はダランと下ろしたままです。」

私は彼の真っ正面に立つと、左腕を下ろしたままその胸を突いた。彼の体がバランスを崩し、後方に流れたのはいうまでもない。

「それでは」と、小山田がいった。「今度は左腕を上げて、胸を突いてください。ボクシングの左ガードのような格好でけっこうです。」

私は左手で左の頬を覆うボクサーさながらのスタイルをとると、同じ位置から彼の胸を突いた。体が大きく弾け飛んだ。

最初の突きとは、掌に伝わる衝撃が明らかに違った。彼の体もその分、大きく後方に崩れていた。この2種類の突きを交互に試みた。何度やっても、後者のほうが、より力が相手に伝わった。

「左腕を高く上げたほうが、より強く押せたはずです。なぜだか、分かりますか?」

「さあ・・・、なぜでしょう」

私は首をかしげた。

「こういうことです」と、小山田が説明を開始した。

「左腕を下ろして突くと、人間というのはどうしても体の中心に軸を作ってしまうんです。しかし、左腕を上げると、知らず知らず軸が左肩に移行する。つまり、左腕を下ろして体の中心軸で相手を究くと、当たるまでの右腕の回転半径が短くなり、一方、左肩を軸にして突くと、右腕の回転半径が長くなる。その分、威力が増すわけです。

ボクシングではよく左ガードを上げろと言うでしょう。あれは防御のためだけではなく、実は強いパンチを打つためにも有効なわけです。

サンフランシスコ・ジャイアンツのバリー・ボンズ(左打ち)なども、右肩甲骨に軸を作って体を後ろに引っ張り込むようにしてスイングしている。

バットの先端と軸までの距離が長くなっているわけで、だからこそあれほどの飛距離を生むバッティングができるんですよ。西武のカブレラも同じようなスイングですね。要するに、体の面を使うという動作です。これは、二軸理論に基づいてますが、投げる動作にも同じことがいえるわけです。』

 

広辞苑から

ねじる:棒状・糸状のものの両端をつかんで、互いに逆の方向にまわす。

ひねる:身体の一部をねじってまわす。

まわす:ある点を中心にその周囲に沿うように動かす。輪を描くように動かす。回転させる。

向きを変えさせ、他に移す。差し向ける。

軸:理)物体が回転運動をする時、空間的位置を変えず物体に固定したものとみなされる直線。「回転軸」

二軸理論とは、体に中心軸を作らず、左右のどちらかを軸とする動きである。ねじり動作を抑えた自然の動きということになり、したがって、近頃ブームになっている体幹筋の強化を必ずしも必要としない。いわゆる交差型動作(ねじり動作)と対立する概念である。

小山田によると、体の中心を軸とする打ち方は、はるか50年ほど前、つまりべーブ・ルースの時代に取り入れられた打法で、その理由も当時のバットが1500g前後と、現在のバットの倍近くも重かったことによるという。

 

小山田の話によると;

『ヒップ・ファーストといって、日本の投手はお尻を打者に向かって移動させながら投げるのが特徴です。つまり、大きく真っすぐに踏み出すことで、急激なブレーキをかけ、さらにそれを乗り越えて投げるため、どうしても体幹を捻らざるを得なくなってしまうわけです。

一方、アメリカの投手の特徴はアウトステップによって、体の面をスッと落下させるように投げるのが特徴です。つまり踏み出し足で踏ん張っていない。

実際、野茂を初めとしてアメリカに渡った日本人投手のほとんどが、踏み出し足をアウトステップさせるアメリカ式に変わった。イチローや新庄にしても、外野からの返球の際、体幹部分を捻ることなく、体の面で押し出すように投げています。ドラフト1位で中日に入った前田(章宏)という捕手がいますね。

僕は彼のトレーニングのお手伝いをしたことがありますが、盗塁阻止の際には、とにかく捕球後のミットを落とさず、高い位置をキ一プしたまま投げるように、アドバイスしています。長嶋(茂雄)さんもスローイングの際、グローブを高く上げてましたね。

これらはすべて、左肩甲骨に軸を作ることによって、体の面を利用したアメリカ式の投げ方です。上肢、下肢は関節があるのでねじれますが、体幹部分のねじれというのは、実はそれほどの力を生み出さないんですよ。

このアメリカ式と日本式の投げ方は、どちらが優れているとは一概に言えないのかもしれません。ただ、アメリカ式の場合、体の面が先に出てくるので、腕がいつ振り出されるか、そのリリースポイントが分かりにくい。僕は昭和59年から62年まで広島の選手会雇われのトレーナーをやっていましたが、江夏(豊)さんや大野(豊)さんなどは、ほとんど面を使って投げるタイプでした。

一度、彼らのブルベンの打席に立ったことがありましてね。

面が先に出て、いつ腕が出てくるか、まるで分からなかった。分からないどころか、インコースにバーン! ときた途端、ボックスの隅っこに逃げていましたよ。

このアメリカ式の投げ方のもう1つの利点は、投手の故障回避に繋がることですね。肘や肩に負担がかかりませんから。』

また小山田は二軸動作の有効性を認識したのは、平成6年、空手道場に通い始めたことがきっかけだったという。

 『僕は野球と陸上の経験があります。でも、空手をやることによって、昔の自分がいかに考え違いをしていたか認めざるを得なくなった。それまでは押したり投げたりという動作にねじれを使ってましたが、これが大した力を生み出せないことが分かったわけです。

空手の動きは体幹部分のねじれをほとんど使わずに、上肢、下肢だけのねじれで大きな力を発揮するというものです。その身体操作は二軸の構えによるものですが、二軸でなければ連続技ができない。空手だけでなく、剣道や合気道など武道のほとんどがそうです。

要するに、二直線的動きが武道の特徴ということになります。その特徴を活かすための重要なポイントになるのが、股関節の可動城なんですね。具体的にいうと、股関節の内旋、外旋だけによって上体の面を動かすということです。

ヒントになったのは、うちの治療院に通っていたクラシックバレエのダンサーでした。クラシックダンサーはねじれを加えるのは四肢だけで、すべて体の面で動いている。完企な二軸の動作ですね。

さっそくダンサーにストレッチを習って、股関節の動かし方を教えてもらった。まずやったのは座って開脚した状態からの股関節の外旋運動です。

最初は開きませんでしたが、1ヶ月もすると、開くようになりました。次に内旋運動に取り組んで、やがて開脚したままで胸を床につけられるようになった。こうして、股関節の可動域を広げて、外旋、内旋ごと体の面を動かすことを覚えたわけです。』

『二軸を基本とする武道の動きは、この股関節がキーポイントになっている。僕がいろいろなスポーツ選手に武道を勧めているのもこのような理由からです。日本のスポーツ、特に野球は他のスポーツとの掛け持ちを許さないという変な習慣がありますが、武道の動きはあらゆるスポーツに活かせるはずですよ。』

次に、「メジャーリーグvs日本野球」というほんの中から、動作分析の結果が次のように説明されています。

 

ピッチングの場合:

スピード&パワーという言葉は、見た印象とかイメージのような感覚的な意味を表わす言葉で、それ自体あいまいであるので、その内容を具体的に説明することには無理がある。

メジャーでも、速球投手がつねに時速160㌔を超えるボールを投げるわけではない。時速150㌔台のボールを投げられれば、速球投手の範疇に入る。ランディ・ジョンソンのように時速160㌔を超えるボールを投げられる投手は、メジャーでも例外的であり、ボールスピードに関しては、日本人の投手がメジャーリーガーにくらべてそれほど劣っているわけではない。

ピッチャーの場合、スピード&パワーのスピードとはなにを意味するか。ランディ・ジョンソンと松坂大輔投手を比較してみる。

ランディ・ジョンソンの投球は、キャッチボールでもするかのような無造作な投げ方で、投げるスタイルは日本の投手とはまったくちがう。

  • まず、踏み出す足のスタンス(ステップの歩幅)が狭い。
  • 肩から先にまるで朽木が自然に倒れこむようなウェイトシフトが行われる(これは専門用語では「ショルダーファースト」という)。
  • 主として上体の横回転で腕が振られる。 といったところが目につく。

高く引き上げた前足を踏み出したところでピュッと体が横回転してボールが放たれ、静止状態のボールがトップスピードに達してリリースされるまでの加速時間が短いのが特徴といえる。それで、球速は時速150㌔を軽く超えるので、短い加速時間内に生み出されるパワーは強烈である。

車でいえば、ゼロヨンと呼ばれるレース(直線400mのコースを静止状態から一気に加速して何秒で走るかを競うレース)といえる。短時間の一気の加速を可能にするパワーとそれが生み出すスピード、この加速感覚がスピード&パワーの正体だといえる。

ランディ・ジョンソンは2mを超える長身で、腕も長いので上半身の回転が横回転主体になると思われる。この点を除けば、メジャーの投手の特徴は共通している。肩から先にウェイトシフトする(肩から体が前に出ていく)ショルダーファースト投法で、ボールリリースまでの加速時間が短い。

 

松坂投手の場合は;

  • 高く引き上げた前足をウェイトシフトして踏み出すときのスタンスが広い。
  • ウェイトシフトはお尻から先に行われる(これを「ヒップファースト」という)。
  • 上体は踏み込んだ足の股関節を中心に横にひねられながら大きく前方に回転する。
  • この間、ボールは流れるように加速されリリースを迎える。

球速はランディ・ジョンソンと同じく楽に時速150㌔を超えていく。しかし、一気の加速感覚ではなく、流れるような加速である。車でいえば、流体力学の粋をきわめたF1といえる。

松坂投手の場合、踏み込んだ前足が着地するまでヒップの回転もボールの振り上げによる上半身のひねりも起こらない。着地の寸前に初めてヒップが回転し始め、ボールを持った手に引きずられて上半身の逆ひねりが始まる。

ウェイトシフトしている間、ボールはゆるやかに上へ振り上げられながら前方へ加速され、前足の着地とともに始まる股関節を中心とした前方回転と上半身のひねり戻しの連携でボールはさらに強く加速される。これが、全体として流れるような加速感覚を生み出している。

 

守備の場合:

メジャーの内野手は、捕ってから投げるまでの時間が日本の選手にくらべてワンテンポ早い。メジャーの内野手は捕球して1回ステップしてから送球するワンステップスローで、日本の内野手はツーステップスローといえる。

日本の内野手は、ボールを捕球した低い姿勢から、ボールを握りながら送球のための高い姿勢に入ったところで送球動作を開始する。しかも、その送球動作がピッチングのフォームである。すなわち、ヒップファーストで左足を踏み込み、左の股関節に乗りながらボールを握った右手を右後方へ振り上げ、上半身を左にひねりながら前方回転して投げる。

メジャーの内野手は、上半身の動作はメジャー風のピッチングと同じである。ショルダーファーストでウェイトシフトしながら上半身を右にひねってボールを右後ろへ振り上げ、そのまま上半身を左へひねり戻しながらボールを投げる。

しかし、下半身の動きはピッチングの逆になっている。ピッチングは左足を踏み込むが、逆に右足を前に振り出す。右足を前に振り出すとヒップが左にひねられ、下半身は左にひねられる。下半身がこのような動作を行っている間、上半身はボールを右後方に振り上げながら右にひねられるので、全体としてすごいひねりが体に加えられる。

これが「上下逆回転ひねり」である。このひねりのひねり戻しの勢いでボールを投げる。投げたあとは反動で左足が前に出る。この動作はヒップファーストではできず、ショルダーファーストでなければこの動作をスムーズに行えない。

これに対して日本の内野手の場合は、きっちりステップしてツーステップスローになり、ピッチングと同様に流れるようなスローイングになる。捕球してステップしてから、右肘をしっかり上げてビシッと投げる。

 

バッティングの場合:

バリー・ボンズと松井秀喜選手のバッティングを比較してみる。

松井選手の場合は、ピッチャーがボールをリリースした瞬間から右足を上げてステップがはじまる。右足を踏み込みながらヒップも頭もピッチャー側へウェイトシフトする。その間、グリップの位置はもとの位置かより高い位置に保たれ、グリップのコッキングが深くなる。

この間、体の回転はしない。右足が着地するころから、左膝が前方へ送り込まれ、ヒップの回転が始まる。右足が着地した瞬間から、頭の位置は止まる。その瞬間にグリップはぐっと引き下げられ、左肩は下がり、左脇が締まって、バットはグリップの深いコックのまま左肩後方からボールを狙う位置にくる。

この間、ヒップの回転がさらに進行する。これによって、上半身とヒップの間が強烈にひねられ、一瞬遅れて上半身のひねり戻しが開始されてスウィングが始まる。

要は、右足をステップしている間、体の回転がおこなわれていないということである。これは、ピッチングに似ている。日本のピッチャーは前足を大きくステップして、それが着地するまでは体の回転が行われない。バッターも同じということである。

バリー・ボンズの場合は、右足をスウッとステップする。注目すべきは、ステップの開始とほぼ同時に後ろの左足の膝をぐっと前に送り込み始める。この結果、ヒップはステップしている間に回転を開始する。

この間、グリップは最初腰のあたりの低い位置にあるが、ステップの開始と同時に上後方へ上がり始め、それに引きずられて両肩はヒップと逆方向にひねられ始める。したがって、ショルダーファーストのピッチングと同じように、前足の踏み込みが完了した時点で、上半身と下半身が強烈にひねられている。

前足を踏ん張ることでさらに強烈なヒップ回転が行われ、それに引きずられて一気に体はひねり戻される。この間、頭はやや前へ移動する程度でほとんど動かない。したがって、スウィングの印象は構えた位置で一気に回転して打つように見える。

静から動へ一気に移行するスウィング、これを可能にする体の上下逆回転による強烈なひねりとひねり戻し、これこそがスピード&パワーの正体である。

メジャーリーガーたちのほうがスピードとパワーがあるように見えるのは、「短時間に加速して、最高速度に達することができるので、同じパワーの持ち主でも、よりパワーがあるように見える」ということである。』

ここまで読めば、二軸理論をどのように考えれば・どのように捉えればよいのかわかると思います。『理論』という言葉の使い方には、いつものことながら慎重をきすことが大事かと思います。

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