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「第3回UHPC北海道 陸上競技クリニック見学記」|ニュースレターNO.71特別篇

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日本スポーツトレーニング研究所 スポーツトレーニングスペシャリスト
代表 小俣よしのぶ

先日、魚住先生のご厚意により北海道で行われた「UHPC T&Fクリニック」を見学させて頂いた。クリニックの感想を一言で表現すると「濃密!」である。通常、クリニックや講習会というと短時間で一通り方法論やドリルを紹介したりするものである。

言い換えると参加者の専門的知識レベルや競技力を考慮せず主催者やインストラクターのペースにより進められ個別的あるいは専門的に対応しないものである。当然、先生の行われるクニックであるから他のそれらのものとは、趣が異なるであろうことは理解していた。

そして、正に考えたとおり、あるいは期待したとおりであった。正確には、クリニックと呼ぶより合同練習と表現したほうが適切であろう。

参加者は、中学生から社会人の男女でUHPCメンバーも参加していた。土日の2日間行われ、午前中に短距離種目、午後にハードル競技に分かれた。

ほとんどの参加者は、過去2回のクリニックに参加していることもあり先生から大きな変化を観ることはできないであろうと伺っていた。実際、大半の選手は、慣れた様子で黙々とトレーニング課題に取り組んでおり2日間の練習で目立った変化を表した選手はいなかった。

これは、逆に驚きであった。本来なら指導者が毎日つきっきりで選手の変化を見極めながら指導するものである。しかし、UHPCメンバーをはじめとするクリニック参加者は、月にたった一度だけ先生の指導を受け各自トレーニング課題として頂いたものを目標として日々トレーニングを続けている。

先生は、たった2日間、それも合計で10時間にも満たない中で各選手の特徴を見極め適確に指示を与え、選手が先生の指導に従いトレーニングを実行し確実に成果を挙げているのである。このような指導スタイルとその結果を見ると、毎日しかも長時間におよぶ激しい練習を課し厳しく選手を管理する指導者とその指導方法に疑問を持たざる得なくなる。

実は、参加者の中で目立った変化を発見できなかったというのは正確ではなく、本当は、たいへんな変化を目撃した。それも短時間、経った数十分、お昼休みの時間を使っての指導において起こった。クリニックには、中学生が数名参加していた。

その中の走り幅跳びと砲丸投げの選手への指導と、その結果は、目を見張るほどの変化を見せ、またそれを傍らで見学していた人を驚嘆させるものであった。

クリニックには、2名の男子中学生の走り幅跳び選手が参加していた。先生は、両名に一旦跳ばせた後、踏み切り時のステップと踏み切りに至るまでのリズムを簡単に教えた。それはポーツバイオメカニクス的複雑なフォームの解説や選手あがりの指導者に多く見受けられる自分のイメージを伝えるような曖昧なものではなく、非常に簡単な指摘で中学生であっても特別な訓練など必要なくできるようなことであった。

実際、彼らの跳躍フォームは、明らかに改善され記録も大幅に向上した。一旦、要領をつかんだ選手は、跳ぶことの喜びを得たように疲れも見せず次々とダイナミックできれいな跳躍を見せた。せいぜい10分程度の指導で、これほどの結果を示すことを間近にして指導方法の合目的性が結果に大きく左右することを再認識させられた。

また、砲丸投げの女子選手に対しても数度試投させた後、ステップの改善、球の持ち方、リリース時のフォームとフォロースルーに関して指導された。

それまでは、フォーム、砲丸の軌道と方向性、投擲距離もまちまちであったものが、みるみる改善され、フォーム、軌道、方向性、距離とも安定した。これは、最も指導された本人が感覚として自覚したようで、これまでの悩みが一気に払拭できたという喜びに溢れているようであった。

この3名の他にハードル競技に2名の女子中学生選手が2日間にわたり参加していた。彼女達の最大の課題は、ハードル間を3歩で駆け抜けることであった。通常、ハードル間を3歩で駆けるのは容易なことではなく、おおかたの中学生は、4から5歩で通過すると聞いている。彼女たちとり「3歩」というのは、とてつもなく大きな壁であり、多分これまで想像もしなかった極地であったろう。

初日は、スタートから1台目のハードルまでの歩数と踏み切りの調整を行った。初日ということもあり、なかなか要領がつかめなかったが、いいイメージで練習を終了できたように感じられた。2日目、前日のイメージが一気にパフォーマンスとして現れた。参加者全員でフォームの確認、ランニングフォームのイメージ創り、スタート動作のトレーニングを行った後、各自の種目に分かれた。2名は、前日の課題に再び取り組んだ。

軽く数本、スタートから1台目のハードルへのアプローチを始めた。すると、本人たちに確認したわけではないが昨日と比べ明らかにアプローチの感じが軽やかに見える。スタートから1台目のハードル、2台目のハードル、3台目、4台目と先生が徐々にトレーニング負荷を上げていく。

彼女達は、先生の「いけるよ!」「いいよ!」「ホラ!」という言葉に乗せられどんどんハードルを跳んでいく。時間が経つにつれ、気がつくとスタートから1台目のアプローチの正確性が増し、なんとハードル間を3歩で通過している。

その光景は、まるでハードルを跳んでいるのではなく駆け抜けていると言ったほうが正しい形容である。初日は、恥ずかしさが先に立ち怖気づいていた彼女たちも練習の最後には、大胆に全力でトレーニング課題に取り組んでいる一人前のアスリートの姿を見せていた。それは、他の社会人や大学生の参加者と引けを取らない、いやそれ以上に躍動感を感じさせるものであった。

今回のクリニックは、彼女達のスタートしたばかりの競技人生において追い風となる素晴らしいスタートであったと信じる。

先生の指導は、上記したとおり決して難しいことは指導しない、言葉も単純で理解しやすい表現である。また、一流競技者あがりのような目を見張る実演もない。しかし、その指導は、適確で確実にトレーニング効果となって現れる。

特に印象に残るのは、選手の感覚を大事にすることと、それを引き出す言葉選びと声かけのタイミングである。私は、これをそれぞれ「感覚注入法」「感覚確認法」「感覚覚醒法」「感覚獲得法」と勝手に名付けた。

先生が選手に感覚を教え込む際に身体を通して行うのが「感覚注入法」、選手が一旦、きっかけを掴んだ際に行うのが「感覚確認法」、いいイメージを呼び起こさせるのが「感覚覚醒法」、そして、本来選手が持っていない、あるいは体感したことのない感覚を獲得させること、潜在意識下へ焼き付るものが「感覚獲得法」とした。

これらは、私の造語であるので専門的な用語ではない。実際は、先生の指導を形容する適切な言葉がない。言い換えると言葉で表現できないのである。それは、指導というものは、理屈や競技経験に基づく経験論ではなく、指導理論・原理という科学的要素と豊富な指導経験による実践的要素を融合させ体系化し独自に理論構築たものの実践応用であるためである。

仮に「魚住先生理論」というものが存在すのであれば、私は、今回それを目の当たりにしたのであろうと推測する。

最初に申し上げたとおりクリニックと銘打っているが実際は、合同練習会と言ったほうが正しいと言ったのは、参加者全員が先生から直接指導を受け、トレーニング課題を提示され、各自が向上を目指して取り組んでいる真摯な姿勢がクリニックを単なる講習会ではなく合同練習会と成らしめていると考える。

その姿勢は、先生の指導者としての思い入れと先生自身の競技者としての情熱に働きかけ、クリニックをより一層奥深いものとしているのであろうと感じさせられた。また、今回の見学は、私にとり指導の基本の再認識と魚住先生のライフワークを間近に感じさせて頂いた貴重な体験であった。

これまで、セミナーや講習会等以外で先生指導をされる場面を見学させて頂く機会になかなか巡りあうことができなかった。HSSR会員の多くの方々も私と同様に先生の指導現場を体験されていないであろう。「百聞は一見にしかず」である。一度、北海道で行われるこの練習会に参加されることを薦める。

必ず、多くのことを学び、再確認し、新たな刺激を受けることを保証する。特に指導者として活動されている方、専門種目が陸上競技以外であっても参加する価値は、大いにある。

最後に、今回の機会を与えて頂いた魚住先生に心より感謝申し上げます。また、北海道滞在中にお世話になりましたUHPCメンバーの清水先生、井内先生、水野先生、朝比奈さんに対して心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

また、来る6月6日(金)より横浜国際総合競技場で行われる第87回日本陸上競技選手権大会にUHPC所属選手の井内 聖さんが男子400Mハードルにエントリーしている。先生の指導を受け万全の態勢で挑む大会である。今回の北海道クリニックではじめてお目にかかり、その人柄の素晴らしさ、陸上競技にかける真摯な態度に久しぶりに見たインテリジェンスを感じるアスリートであった。

自己記録更新や善戦と言わず、是非ファイナリストとなり決勝のラストコールを受けて頂きたい!
皆さんもご注目あれ!

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