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ヘビとクジラの弁証法|ニュースレターNO.084

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いつも興味深いお話しを提示していただいております横浜市スポーツ医科学センターの橋本吉登先生から、昨日以下のようなメールをいただきました。非常に興味深い話であり、ぜひ会員の方々にも読んでいただきたいと思い、お願いしてニュースレターに掲載させていただくことにしました。

『 今、「動物の体幹の使い方の歴史は?」なんてことに興味を持っています。それで、動物の解剖の本や進化の本を読んでいましたが、ヘビとクジラについて面白いことがわかりました。

ヘビはトカゲと同じ爬虫類に属しますが、トカゲの様な手足がありません。その昔は手足があったのですが、進化の過程で無くしました。普通は「退化」で済ませてしまう事例ですが、よくよく調べるとこれも一つの進化と呼べるのではないかと思います。

進化論で行けば脊椎動物は「魚類→両生類→爬虫類」と進化しています。魚類の胸ビレが手となり、腹ビレが足となったといいます。魚類は泳ぐ時に体幹を横にくねって(側屈して)、それを尾びれの推進力として進みますから、体幹の基本は側屈運動です。

両生類の手足はサンショウウオの手足のようにヒレから進化していますが、まだ貧弱で手足だけでは前に進めないので、魚類の体幹の側屈を基本にして動き、手足の役目はせいぜい地面に引っかけて「滑り止め」としての働きをしております。

トカゲのような爬虫類になりますと、手や足が発達してかなり性能がよくなっています。このためトカゲでは横にくねるポイントが手の部分(体の前半分)と足の部分(体の後ろ半分)の二カ所にあり、それぞれ独立して動きます。魚類と両生類の側屈の体幹のエンジンが体の中心に一つだったのが、爬虫類では前後にあり、二つになったために効率の良い動きが出来ます。

ここまでは普通の話で、「トカゲなどの爬虫類は魚類、両生類の体幹の使い方を否定して体幹の使い方を進化させた」という命題が成り立ちます。しかし、ヘビは折角勝ち取った手と足を自ら無くしてしまいます。

これでは前後の体幹の側屈エンジンも使えなくなってしまいます。ヘビは「魚類、両生類」を否定したトカゲの仲間の自分の祖先をさらに否定したことになります。ところが、話は「退化」で片づけてしまっては面白くありません。

ヘビの移動の仕方を観察すると自分のうろこにある小さな突起を地面に引っかけて動きます。そして体幹はやはり側屈運動を基本としますが、トカゲでは前足と後足の二カ所しか引っかけるところがなかったのですが、お腹側のうろこはたくさんあります。

トカゲの手も足も物を掴んだりは出来ず基本は地面に引っかけて移動するための物なので、実際はうろこの突起でも役割とすれば十分です。ヘビは4本の手足を捨てた代わりに無数の手足を得たことになります。また、ヘビはクネクネクネと体幹のいたるところで側屈できますから、体幹のエンジンがトカゲの様に前後2つだけではなく、無数にあることになります。

ヘビは4本の手足は失いましたが;
○引っかかる物(手足)が無いために狭い隙間でも入って行ける(ネズミの穴や鳥の巣に入れる)。
○地面に引っかけるのは小さなうろこの突起であるので、移動の音が非常に小さく、獲物に気づかれない様に近づける。
○体幹のエンジンの数が多く、大きくても素早い動きが出来る。

などなどトカゲには無いメリットがいっぱいあります。

ここで思い出したのが魚住先生にうかがった「否定の否定」という弁証法の考え方でした。ヘビは爬虫類の一族としていったんは「魚類、両生類」を否定しましたが、さらに「爬虫類」を否定することで独自の動きを身につけました。

ポイントは「爬虫類」を否定して魚類や両生類の運動パターンに逆戻りしたわけでなく、「複数の部位で地面を引っかけて側屈を使って前進する」という爬虫類の運動パターンをさらに押し進めた移動法となったことです。「否定の否定」が単なる肯定や逆戻りにならないというのはまさに弁証法と考えられます。

そしてクジラの話です。

クジラは元々陸生の毛が生えた哺乳類でした。哺乳類は「体幹を側屈させて、足を地面に引っかけてすすむ」という爬虫類の移動法から「体幹に頼らず四肢の力を基本に移動する」と「爬虫類」を否定して進化しています。

陸上の哺乳類だったクジラの先祖が、今度は陸上の生活を否定して海の哺乳類に変化したのがクジラです。足を失い、手をヒレに変形していますが、やはり「否定の否定」が起きています。見た目は魚類に近く見えますが、クジラの運動は爬虫類や魚類に逆戻りしたものではありません。

クジラは尾びれとなった尾を上下に振ることで推進力を得ています(尾の形状も全く違います)。これは体幹の動きでは「前後屈」運動です。前後屈運動が可能なのは哺乳類の特徴でサカナやワニでは腹筋運動が出来ないことからもわかります。

クジラは「否定の否定」の動物ですが、爬虫類に戻ったのではなく、動きの基本は哺乳類で、独自の進化となっています。やはりこれも弁証法です。
長くなりましたが、スポーツの技術を身につけるのもこんな要素があるのではないかと思います。

野球の投球動作などでもいろいろな指導を受けるわけですが、監督は「もっと肘を上げろ」とか選手の欠点(?)を指導します。選手の技術を否定するわけですが、選手は二通りいて、監督の言葉の通りに必死にやって出来るタイプと言葉どおりには出来ないタイプがいると思います。監督の指導が正しいものであれば問題ないのですが、時々は間違った教えだったりします。

「間違った教え」を否定しないで出来ちゃった選手は間違った技術が身につきますが、意識的に(監督をなめている選手)あるいは無意識的に(やろうと思っても言った通りに出来ない選手)監督の言う通りにやらない(出来ない)選手がいるわけです。

つまり、「否定の否定」をする訳です。ただ、「否定の否定」をした選手が元の技術を繰り返すかというとそうでもなく、元の技術でもなく監督が教えた技術でもなく、もっといい技術を身につける可能性もあります。

そういう場合は、「ほら、俺が教えたとおり(?)にやったら上手くなっただろう」と自慢げに話すわけです。ただ、優秀な指導者はこの効果を狙って自分でも「正しくないな」と思う技術をあえて選手にやらせて良い技術に誘導する時もあるかもしれません。

有名な高校のバレーボール指導者が、ある選手がどうしても肘を曲げてスパイクを打つので、その選手の肘をあて木にくくりつけてずっと練習させたそうです。あて木をとった後の選手は見違えるようなフォームになったと言いますが、これも誰にでも良い練習とは思えません。』

物事の考え方というか、新しいレベルに、また現状を打破するには弁証法的な考え方が非常に役立ちます。特に現状を打破できずに悩んでおられる方は、まずこれまでの考え方を白紙に戻す必要があるということです。

古いものにこだわりすぎることの弊害も考えられますので、全て否定することができなければ、部分的に否定することからはじめてみるのもよいと思います。見方を変えれば、条件反射にも限界があるということです。

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