未分類

2004年日本陸上競技選手権|ニュースレターNO.096

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

先週の週末の4~6日、鳥取で行われた日本陸上競技選手権にUHPCの井内選手が参加しましたので、コーチとして出かけました。昨年は、400mHで決勝進出を果たしたのですが、今回は残念ながら9番目で決勝進出を逃しました。

彼にとっては、これが現役最終レースでしたので、何とか上位入賞をと願っていたのですが、力尽きたというところでしょうか。彼とは、10年来の付き合いになりますが、ここ2~3年間は、中学校教員としての仕事が多忙となり、満足のいく練習ができずじまいでした。

それでも何とか日本のトップ10には入ってきたのですが、頂上にたどり着くことができませんでした。1週間に一度走れるかどうかといった練習環境のなかで、ここまでがんばってきた彼の競技者としての姿勢には頭が下がります。

予選は、彼の組だけ向かい風が強く、その差が6/100秒差で決勝を逃したのですが、レースそのものは最高のものでした。最終コーナーを回ってから始めて追い込みができました。「たら」「れば」を言えばきりがないのですが、彼も満足できたレースであったと思います。これからは後輩達のよき指導者になってもらえれば嬉しく思います。

彼には、競技環境にまったく恵まれないなかで、しかも北海道という地域柄もありましたが、わたしが言う「少しずつ、少しずつの積み重ね」をやってくれました。指導者として、誇りに思います。反面、競技環境に恵まれた選手たちのふがいなさにはさびしい気持ちと、情けないという思いが強くあります。

日本選手権では、サブトラックに毎日おりました。日本選手権に参加する選手たちがどのような動きをするのか、またどんなウォーム・アップをするのか、興味深く観察しておりました。

そんな中で特に目に付いたのは、走りの悪さです。日本選手権に参加しているのですから、それなりのレベルにあると思うのですが、本当にひどい走りの選手が多く見られました。

しかし、末続はやはり別格の動きをしてました。何が違うのかというと、楽にスムーズに動いているということです。一生懸命走るのではなく、スムーズにスピードに乗ること、後は力みなく動きつづけるということです。

体型や脚の太さなど見ていると、脚の筋肉もさほど発達しているようには見えないのですが、スパイクをはいて120mを走ったとき、おそらく8割ぐらいだと思いますが、10mほどで加速するやいなやすごいスピード感がありました。まるで大砲から球が勢いよく飛び出す感じでした。

そして中間疾走を横から見ていたのですが、太ももの筋肉が非常に発達して太く見えました。脚の筋肉が走っているようでした。また、モモの引き上げ感が残像として残りました。よいものを見せてもらいました。また、スタート練習をしていましたが、スタートはまだまだ改良の余地がありそうです。したがって、これから先も大いに期待できそうです。

しかし、気になったことが1つあります。それは歩き方です。特に後ろから見ていて気になったのは、左足の膝が少しねじれて前に引き出されるように見えることです。

新聞には、「右脚が1回転半しているのに、左足が1回転しかしていない感じであった」と述べています。この点が左脚に違和感を感じやすい原因かもしれません。

5月の大阪グランプリで400mリレーを走っているときに、すごいスピードが出たとき左脚に違和感を感じたということですが、そのときのビデオを見ると、右脚はきれいに回転しているのですが、左脚は、キックをするタイミングがあり、左膝を少し伸ばしてキックしていることがわかりました。

それが左脚のひきつけの遅れとなり、左右のリズムが崩れたものと思われます。この辺りの原因も日ごろの何気ないときの歩き方にあると思われます。コーチもこの当たりのコトをよく見てあげてほしいものです。

それで、ひどい走りの選手について、何がひどいかというと、とにかくがんばって速く走ろう・速く動かそうとする意識が強く、それが力んだ動きとなっていることです。速く走るために、腕を意識している選手、キックを意識している選手がやたらと目に付きました。

したがって、滑らかさもなく、流れるように進んでいないのです。特に、女子の短距離選手は、ひどいものでした。同等に男女の長距離もそうですが、走りを見ていると、こちらのほうも力が入ってきます。また、イメージが悪くなるので目を反らしたくもなる選手が多くいました。

能力を持った選手たちに違いないのですが、この走りではどうにもならないのではと本当にさびしい気持ちになりました。どうしてそこまで力を入れて走らなければならないのか、どうしてそんな動きをしなければいけないのか、自分で本当に進んでいると感じているのだろうか、そんな思いしかしませんでした。

やはり指導者の責任です。ある有名なコーチですが、400mHに出る選手のハードリングを見て、私の後ろで独り言を言っておりました。選手がハードルを越えるごとに、「浮いている」「何で浮いているんだよ」「また浮いている」、走り終えた選手にそのコーチは、「なぜ浮いているんだよ」といっておりました。どうしようもありません。

普通なら、ハードルを飛ぶ前に「これは浮くぞ」とわかるはずだし、なぜ浮いたのかもわかるはずで、選手には「今の1台目はこうなったから浮いたんだぞ」とミスのポイントを指摘し、改善点をアドバイスしてあげるのですが、一流コーチといわれる指導者の独り言にしては情けないというか本質を見た気がします。

おそらくこんな現状ですから、日頃の歩き方の指導は当然のことですが、とにかく走りこんだらという発想にしかならないのかもしれませんね。ワンポイント言ってあげたい選手がたくさんいました。そうすればもっと楽に走れるのに、残念の一言しかありません。

末続とともに目に付いた選手がいました。それは男子200mで優勝した20歳の高平選手でした。高校チャンピオンで、順大に進みここまで順調に、というより今回大飛躍したといえます。彼の走りは柔らかいのですが、これまでのレースは後半力みがいつも見られました。

しかし今回のレースは、初めて最後までリラックスした走りが見られ、それがそのまま20秒59というオリンピック参加A標準記録突破につながり、オリンピック参加を決定付けました。短距離のすべてのレースにおいてリラックスできていたかどうかの差が記録や順位の差になっていたように思います。

レースでリラックスして走れるようになるためには、日頃からリラックスした楽な走りをしなければいけません。がんばらないということなのですが、言葉だけではなかなか理解できないようです。

最後にがっかりなのは、男女の長距離陣です。ケニア選手との走りを比較しながら見れたので実によくわかります。日本選手は走っているのですが進んでいない、ケニア選手はどんどん進んでいます。その違いは何なのか。それはスピードを上げよう、速く走ろう、前に進もうとして走っていることです。

自分の意識で手足をしっかり動かしているのです。そのことが余計な動作を生み出し、前に進むことを制御してしまっている感があります。原点は、自然に進んでしまうということなのですが、それを文章で示すことは難しいのですが、実際には簡単に理解することができますし、実感することもできます。

これまでクリニックでやってきていることなので、参加した人たちは全員実感しています。ポイントは、重心の移動ということだけなのですが。きちっと走りを指導しないといつまで経っても世界に追いつくことはできません。今回のレース(男子10000mや女子の5000mなど)のビデオをよく見てもらえば走りのポイントが判ると思います。

特に、女子5000mで、福士とワゴイがラストの400mの争いになりましたが、ゴールでは5秒も差がつきました。それはランニングスタイルの違いにあります。その違いがわかるかどうかが本当の指導者であるかどうかの違いになると思います。

この記事が気に入ったら
いいね ! してね!

Twitter で
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

コメントを残す

*