細胞と運動のはなしから|ニュースレターNO.108

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4月に平成スポーツトレーナー専門学校の校長に就任してからあっという間に12月になってしまいました。

この8ヶ月間、学校の土台づくりに追われ、ようやく来年からの準備ができかけたというところで入試に突入してしまいました。専門学校の入試は大学と異なり、いろいろ難しい事があるようです。将来をにらんで夢を持った方々にきてほしいと思いますが、まだまだ学校の存在が知られていないようで、しんまいの悩みは尽きません。

しかし、過大広告をするよりは地道にクチコミを期待したいと思っております。本当にスポーツトレーナーを目指すなら、本物のトレーナーを目指すなら、きてもらって満足してトレーナーとして独立できるように教育するのが私の努めです。そのためには我慢しながら進んでいくしかないでしょう。

あまり学生数が増えると、教育上、密に教えられない状況にもなるので、そのことも逆に心配しているところです。志ある方は、私のもとで違いを感じてみませんか、毎日が楽しくなるはずです。1年生の1/3が自主的に勉強会を開いてがんばっています。

そのときがいちばん勉強になっているかもしれません。勉強会は、月、水、金の3回、16時30分頃より2時間弱やっています。ぜひ一度、起こしください。学生たちの真剣さがわかると思います。

さて、今回はSportsmedicine 2004 No.66に掲載された跡見順子(東京大学大学院)女史への取材記事で「細胞レベルで考える脂肪-運動の意味するもの」があり、その中で脂肪細胞の話とともに重要な示唆をいただけたところがありますので、抜粋して紹介したいと思います。

『・・・ なぜ脂肪細胞のサイズが大きくなると分泌する物質が変化するのか。

その研究をしたいと考え、脂肪細胞をつくるところまではシステムをつくりました。脂肪細胞をばらばらにして、コラーゲンのゲルの中に細胞を入れる。ところが、脂肪細胞は長時間培養できる系がないのです。脂肪は比重が軽いので水の中では浮いてきて、2日くらいで死んでしまう。

わたしたちのからだの中では脂肪細胞でさえも周りにくっついて生きています。そういう環境を無視して、ばらばらにして、そこにカテコールアミンやインスリンを入れて実験している人が多い。そうでなければ、特定の株細胞を分化誘導して脂肪細胞にする。ところが、完全な球体にならない。脂肪滴を中に含む段階で一応分解と考えて実験は行われているのですが、それは本当の脂肪細胞ではないだろうと思っています。

しかし、採取した脂肪細胞をばらばらにしても丸い形を維持できれば、それは脂肪細胞でい続けるだろうということで、三次元の環境で培養してみたこともあります。それはわたしの研究室の院生が博士論文にしましたが、コラーゲン濃度を低くしたゲルをつくった。

皮膚をつくるときは、線維芽細胞をコラーゲンのゲルの中に入れると、線維芽細胞がコラーゲンを引っ張ったりして皮膚という組織を自分でつくるのです。それと似たような系で脂肪細胞を入れて、非常に薄い濃度、線維芽細胞をつくるときよりもっと薄い濃度にしてやると、脂肪細胞が周りのコラーゲンとやりとりして、最終的に脂肪組織ができます。

また、前述通り脂肪細胞には基底膜があり、細胞骨格があるだろう、それなら動くだろうと考え、それを動画に撮るため、コラーゲンゲルの薄い層をつくり、そこに脂肪細胞を入れて、タイムラグスピデオで撮ったら、ぐるぐる動いていたのです。

その動くというのは細胞骨格とモータータンパク質、あるいは細胞骨格だけかもしれないけれど、そういうシステムがあるから動く。

動いているというのは、実験で分解した組織の中の脂肪細胞は単独では動けないけれど、外部から押したり、もんだりすると、システムとしては動くようになっているわけだから、そのシステムに対して外部から働きかけられるだろうと考えています。

だから、エステでマッサージによって脂肪を取るというのも全くウソではなく、そういうことはある程度起こっていると考えられるのです。ただ、それでやせたというのは言いすぎで、マッサージなどの外的刺激で脂肪が血中に出て、それがどこかで使われない限り、また取り込まれる。

それは同じところかもしれないし、別のところかもしれないけれど、取り込まれる。その取り込みのときに、その部位を押さえつけていると、そこには取り込まれにくいのではないか。これはストーリーとしてはあり得るわけです。

いったん血中に出た脂肪が再び取り込まれるときに、これについてはかなり以前に論文が出されていて、同じ体脂肪量の人が2人いて、1人は定期的に運動をしている、もう1人は運動をしていないとすると、糖の代謝が異なります。運動している人は、糖が入ってきてもすぐに取り込める。

そういう活性が高いのです。それもなぜなのか、気になっていました。そういう話ともつながってきます。同じように脂肪を持っていても、身体内を循環していればよい。循環しているということは細胞が生きているということですから。循環しているということで、ある細胞が出したり、取り込んだりしていると考えられるのです。

細胞の形やサイズは大事で、脂肪細胞については直径が約100ミクロンが通常で、それが200ミクロンくらいになると悪さをし始めるということだったと思います。

・・・・

細胞としてDNAは同じなわけですから、システムなので、ちょうどよい大きさというものがあるはずなのです。筋肉のようにトレーニングによって肥大するとよいというものではない。筋肉は肥大しても異常にならず、発揮できる筋力が高まるというようにプラス効果がたまたま得られたと考えるほうがよいと思います。』

『・・・この頃、本当の応用のための運動のやり方について考え直したほうがいいと思うことが2つあります。1つは実験のためのモデルと実際の応用は別に考えたほうがよいということ。動物は自分のからだは自分で動かすわけだからどうしても脳を考えなくてはいけない。

そしてバランスの問題。自分の視覚、認職、認知を考えたうえで、自分のからだをどう操るか。そのためにどう筋肉をつけていったり、あるいはバランス能力をつけていったりするか、もう一度初めからやり直したほうがいいのではないかと考えています。

もう1つは、ホメオスタシス(homeostasis恒常性:ホメオは同一の、スタシスは状態の意味。アメリカの生理学者キャノンW. B. Cannon1871~1945の命名。

生物体の体内諸器官が、外部環境<気温・湿度など>の変化や主体的条件の変化<姿勢・運動など>に応じて、統一的・合目的的に体内環境<体温・血流量・血液成分など>を、ある一定範囲に保っている状態、および機能。哺乳類では、自律神経と内分泌腺が主体となって行われる。

その後、精神内部のバランスについてもいうようになった。・・広辞苑から)ではないけれど、大きくなることが必ずしもよいことではないということ。最大値を追求することは、アスリートが最大酸素摂取量を高めるときのように一部にはあってもよい。しかし、最大値を得る過程で間違うと壊れてしまうことがあります。

だから、基本はホメオスタシスというか、大きさにしても長さにしてもこの辺が最も適切だろうというところがあるはずなのです。

だからウォーキングもよい運動ですが、ウォーキングだけではなく、太極拳をやったり、走ったり、筋力を鍛えたり、いろいろしたほうがよいということになります。

手や足は知覚神経が多くて、それは鍼灸の世界とつながってくると思うし、動く必要がある部分が関節をつくっているのだから関節はやわらかく維持することが当然だとまず思う。

そしてそれを支えるためには筋力がちゃんとあるというのが多分基本だと思うので、そのためにはウォーキングだけではなく、別の要素を含んだ運動も行ったほうがよいと思います。私自身はジョッグもすればダッシュもし、太極拳もやってみて、異なる要素が入っていれば加える、その他の運動もやってみてからだの別の機能の開発や維持に有効なら取り入れてゆく。

それは人間は機能的にも生物的な創りとしても本当にいろいろな要素を持っているのだから、週に1~2度は様々な刺激を入れることが必要だと思うからです。そして、やってみて、すべての知識を総動員して背景となる科学的合理性を追求してゆくことがとても大事だと思うのです。』

大事な示唆は後半のところです。身体を、また一部の機能だけを大きくしすぎることへの警告のように受け取れました。このことは、私が常々思うことと同じで、筋力にしてもパワーにしても、筋を強く、太く、大きくしたいという前に、現状をしっかり把握しなければいけないという事です。

何を把握しなければいけないのかというと、効率のよい理にかなった身体の使い方ができているのかどうかということです。実際には力もスピードも持ち備えているのに、それを発揮する方法、すなわち動作の手順というか身体の動かし方や集中するタイミングができていないのではないかということです。その動作が、動作手順がきっちりできているが、力やパワーが弱ければ筋トレやパワートレーニングに打ち込むべきだと思います。

その手順を間違って筋トレやパワートレーニングに打ち込んでしまうと、「身体が大きくなったけれど、単純に筋力は高まったけれどパフォーマンスは変わらない」ということになってしまうのです。

最近の相撲取りを見ていてそのことを実感します。それは大関に勢いよく上がったのに、その後は身体が大きくなりすぎで、スピードがなくなり、パワフルでないドタバタ相撲になってしまっていることです。大きすぎず、小さすぎずという中間的な体型が理想かもしれませんね。やはりスピードという要素(スピード感)が感じられなくなったときに気づくべきだと思います。

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