マトヴェーエフ氏を訪ねて|ニュースレターNO.121

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6月9日から14日まで、モスクワに出かけてきました。マトヴェーエフ氏を訪ねて、毎年恒例の行事のようなものになりました。今回は、特別な調査というものではなく、昨年9月にアカデミーで氏の80歳の誕生祝賀会に出席できなかったこともあり、遅ればせながら誕生祝を持参したということと、いくつかの課題(質問)を持って訪ねました。

偶然にも、アカデミーで開催された氏の誕生祝賀会の席で、私がお送りした祝辞のFAXが読み上げられ、非常に好感を得たというお話を伺いました。

私にとっては初耳で、驚き以外の何者でもありませんでした。祝電を託した佐藤さんが、マトヴェーエフ氏にお送りするタイミングが偶然にも祝賀会の日でアカデミーにFAXをお送りすることになったというだけなのですが、喜んでいただけてうれしい限りです。

今回の訪ロでは、着いたその日から帰る日の直前まで毎日マトヴェーエフ氏のお宅に伺うことになりました。その中で、いろいろ質問し、自分の頭の中の整理をしたわけですが、今回の訪ロもそういう意味では非常に成果がありました。今回のニュースレターではその質問の中から、参考になるポイントを紹介したいと思います。また、いつものように訪問記も掲載しますので、それもあわせて読んでいただければと思います。

最初に、筋力とパワーについてお話を伺いました。ロシアではパワーという用語はないようですが、パワーというものをどのように考えているのかという質問をしました。マトヴェーエフ氏が書かれた「体育の理論と方法論」の本を読んでいきましたが、その中にパワーという用語はなく、筋力、持久力、柔軟性、調整力という4つの要素しかありませんでした。

その内容を見ると、パワーという独自の定義も必要でなく、筋力というか、力というものをどのようにとらえるかという理解の仕方に問題があるように思えました。事実われわれが誤解して理解していることが多いようです。実際にマトヴェーエフ氏から説明を受けたことで、筋力・力というものをよく理解することができました。

筋力や力は、力学的な考え方、捉え方もありますが、純粋な筋の能力として捉える必要があるということです。どのような能力かというと、筋肉がどれほどの収縮力を持っているのかということ、筋肉がどれほどの収縮速度を持っているのかということ、筋肉がどれほど収縮の持続力を持っているのかということ、それぞれがロシアでは筋力、スピード‐筋力、筋持久力といわれているようです。

われわれが言うパワーというのは、この中のスピード‐筋力の能力ということになります。また、スピードという概念も速度と混同してはならないといわれました。

スピードというのは、ある動作や動きの速さであり、純粋な筋の活動の速さではないということです。速度というのは、筋そのものがどれほど速く反応するかという能力でもあり、その反応と同時にどれほどの速さで収縮するのかという能力であるということです。したがってロシアでは、筋力、パワー、筋持久力という個別の要素ではなく、純粋の筋の能力として筋力、スピード‐筋力、筋持久力があるとしています。

考えてみるとなるほどその通りであり、パワーといってスピード‐筋力のトレーニングだけに打ち込んでも成果はさほど見られません。そこには、筋力も必要であるし、筋持久力も必要になります。個々の筋の能力をすべてバランスよく改善する必要があるということです。そのために組み合わせのプログラムと計画が必要になるということです。

それから、スピードについても同様で、スピードは動作・動きとしてのダイナミックな活動の速さを現すものであり、テクニックや調整力が必要になるということです。

スピードには、筋の反応・収縮速度が絶対不可欠であることから、このことも忘れてはいけません。常にそのための刺激を与えておく必要があるということです。しかし、基本的にはあまり改善が期待できないので、現状を維持するという考え方になり、そのためにいろんな刺激を与え、ステレオタイプ化しないようにすることです。

そう考えると、ラダートレーニングでスポーツ動作に関係なく、いろんな方向にすばやく足を動かすということも重要であるということになります。

その目的は、反応・反射のレベルを向上させるということよりも、そのレベルを落とさないで維持するということです。

筋力にしてもスピードに関連した筋力(コンセントリックコントラクション)もあれば、スピードに関連しない筋力(アイソメトリックコントラクション)もあります。

また、マイナスのスピードに関連した筋力(エキセントリックコントラクション)もあります。どのような筋力が必要であるかを理解するとともに、他の筋力も組み合わせながらトレーニングしなければならないということです。

すべてが互いに関連し、相互作用を持って目的の筋力を発揮することができるということです。まさに、偏った筋力強化にならないようにということです。筋持久力も何秒間、何十秒間力を出しつづけるには持久力が必要であり、欠けてはならないのです。

また、こんな話をしていただきました。走り高跳びの場合、選手の体重の10%を負荷にして、走り幅跳びの場合は下肢の重さの7~12%を負荷にして跳躍系のトレーニングを行うとより高く、より遠くへ跳べるようになるということでした。ウエイトベストやアンクルウエイトの活用です。

また、男子の円盤投げでは3kgの円盤の投擲が効果的であるという研究結果があるということを教えていただきました。陸上競技などではこのような指標がたくさんあるようです。ただ闇雲にジャンプトレーニングをしたり、投げ込むだけでは結果につながらないということがよくわかります。このような研究グループが各競技団体で組織されなければ、科学的トレーニングにはならないということも理解できます。

科学的トレーニングの「科学」とは何なのか、もっとよく考えてみる必要があります。何が科学的なのか、ほとんどわかっていないのが現状のように思えます。

次に、ニュースレターでも紹介したベルンシュタインの話と調整力(コーディネーション)について話を伺いました。ベルンシュタインはもともと生理学者であり、スポーツの世界とは無縁であったそうです。いわゆる生理学者で学術論文しか書いたことがなかったが、巧みさについて素人向けに解説を試みたようです。

しかし、自分自身満足したものではなかったようです。科学論文以外に書いた初の試みであったそうです。しかし、複雑な事情から出版にこぎつけられず死後に出版されることになったよう。それを読んでわかることは、研究の成果ではなく、仮説的なところがほとんどで現実に使える内容ではないし、例えのところが頭の中で考えたものが多いのでよく理解できないということでした。

ベルンシュタインは「動作の構築(1947年)」という著書を書き、その著書をマトヴェーエフ氏の指導教官であったノビコフがスターリン賞に値するとして推薦され、受賞されたのですが、その後体調面と精神的な問題で、研究所を退職したそうです。

その後、定職につけずにいたのですが「積極性の生理学」の理論を作り上げ、いろんな雑誌に論文を書いていたそうです。その中でパブロフの条件反射を否定するところが出てきて、周囲から批判されるようになり、それで「積極性の生理学」の本も死後出版されることになったそうです。

ベルンシュタインの考え方は生理学から心理学に移行していったようです。彼の残したものは、全体に仮説の性格が強く、完全に証明されたものではなかったようです。そのことは心理学上での解決できない問題であるということにつながっていったようです。仮説の世界が心理ということのようです。

マトヴェーエフ氏は1980年代の後半にコーディネーションから運動調整能力という用語を用いて(1991年に出版した「体育の理論と方法論」において初めて明示された)、運動調整能力を「運動における空間的、時間的、力学的要因を調整して運動を調整する能力である」と定義されました。それまでは『巧みさ』の養成という表現であったようです。

また、質とは哲学的なものであり、ある特質、他と異なるある性質を意味する。この観点からすると、運動調整能力とは、運動能力の発揮、熟練度の発揮という特質と考えられ、能力も質になるということです。他の身体能力と同様にその現れ方は多種多様であり、速さにもいろんな能力があることを理解しなければいけないということです。

運動調整能力の根底にある質・特質とは、器用さ、うまさ、巧みさといえるので、現れ方は多様すぎるものであり、はっきり定義できないものでもあるということです。運動調整能力とは、運動動作を調整する能力、ある動作から他の動作に移行する調整能力であり、あるものとあるものをすり合わせる、調整する能力であるといえるようです。

この点からすると、ベルンシュタインも誰も巧みさというものを定義していないと言えるようです。だからマトヴェーエフ氏は『巧みさ』ということばを使わず『運動調整能力』ということばを使って明確に定義したそうです。

しかし、ベルンシュタインの研究がスポーツの中で巧みさについて取り上げられるきっかけにはなったと考えられるようです。そして、緊張と弛緩の配分や体のバランス・平衡性をどのように保つかということも追求されるようになりました。

動作の空間的正確さをいかに保つか、時間的正確さをいかに伸ばすか、どこでどのように力を入れるかという正確さのことが考えるようになり、これらの3つの正確さを同時に調整する必要があるということがわかったようです。

動作の習熟、運動調整能力のレベルはひとつのレベルに到達した後、そのレベルを保持することはできない。すぐにバリアが現れるので、次のレベルにアップするための調整を考えなければならないということです。いわゆるいつまでも同じ練習・トレーニングをしていてもレベルアップは期待できなくなるということです。

到達したレベル・要素が固まらないようにし、絶えず一度壊して、新しい要素を構築する必要がある。特に、調整能力において、スタンダードで条件が決まっている場合に、そこで調整能力を発揮する場合と、突然運動条件が変わってそこでうまく調整していく場合があるので、この2つを絶えずやっていく必要があるということです。

19世紀の初頭、体育の父といわれたレスガフトは「重要なのは力を持つということだけではなく、いかに支配する・コントロールするかということが重要である」といったそうです。このことからも運動調整能力のそれぞれの要素について十分分析し、適切なプログラムを実施すれば誰しもトップアスリートになれる可能性があるということです。

そこにどれだけの分析と計画的なプログラムの実施ができるかという指導力が必要になるということです。このことは、筋力、パワー、スピード、持久力についても同様の考え方が成り立つということです。

以上の話でもわかるように、一つ一つの身体要素をきっちりと定義し、多面的に理解することからトレーニングが成り立たなければいけないことがよくわかりました。これまで、トレーニングに関して、また身体機能の要素に関して理解が浅かったことを反省するとともに、常に広い視野を持って取り組まなければいけないことを教えられました。またまた『木を見て森を見ず』を諭されることになりました。

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