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新しい筋力トレーニングの考え方|ニュースレターNO.153

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5月に心臓の手術をして4ヶ月が過ぎました。退院時に51kgほどしかなかった体重も、現在では60kgを行ったりきたりしています。また、体脂肪率も20%前後をキープしています。退院してから、ホネホネの身体を再生すべく、身体づくり、体力づくりに精を出すのですが、胸の骨を縱に切り開いたので、完全骨折状態で、重いものを持ったり、腕を伸ばしたりすることができませんでした。

上半身は、7.5kgのダンベルを両手に持って動かせる範囲でいろんな方向に動かす程度のことをやっていました。そして、下半身の強化は、自宅でのスクワット系のエクササイズをしていました。そのおかけで、8月の終わりごろには、少しは見れるような身体つきになりました。

それが9月の最初にモスクワにマトヴェーエフ氏の墓参りから帰ってから、ダンベルを使うのをやめました。ふと閃いたのです。これまでは、軽いダンベルや自体重をつかって、スローに腕を動かしたりスクワットをやっていましたが、両手の指を合わせて押し合いながら腕に曲げ伸ばしをしてみたら、上腕の筋肉が膨らみました。

アイソメをしながら、コンセントリックとエクセントリックをするのです。動きを止めないでスローに繰り返すことで、3つのタイプの収縮が同時に行われるのです。これをスクワットに応用し、股関節の軽い屈曲伸展をゆっくり繰り返すだけで、下肢の筋肉も直ぐに膨らみました。

非常に面白い現象だったので、直ぐに平成スポーツトレーナー専門学校の教員にも教えました。器具を使わないでも筋肣大が得られたのです。このエクササイズをやりだしてからは、驚くほど肉体が変身しました。

ところが、二度目の驚きが直ぐにやってきました。9月の終わりに、Sportsmedicine 2006 No.84が送られてきました。その中に『低負荷・無負荷での筋力トレーニング-「意識」がもたらす効果について』丹羽滋郎(愛知医科大学名誉教授)、高柳富士丸(愛知医科大学医学部運動療育センター)氏との対談記事が掲載されていました。その記事を読むと、正に私がやり始めたトレーニング方法の解説でした。

そこで、今回はその記事の一部を紹介します。そして、この記事に続いて書かれている、石井直方氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)の『低負荷でのゆっくりとした筋力トレーニングの効果と意味』の記事も続けて読まれると、より参考になると思います。そして、トレーニングの引き出しを一つ増やすことができるはずです。

『丹羽:さらに高柳先生は、こういう結果が出てくるのなら、重さや負荷の問題ではなく、意識してスピードをコントロールして運動すればよい結果が出てくるのではないかと考えられた。

-無負荷でもよい。

高柳:そうです。重量物としての負荷はなくても、その負荷は拮抗筋が与えている。手に重量物を持たなくても負荷は拮抗筋が与えてくれる。通常、アイソメトリックのトレーニングの代表的な動作として、胸の前で両方の掌を合わせて互いに押し合うというものがあります。写真1aのように、両方から押して止めてやります。

このときの負荷は互いに反対側で止めている力だけです。そうなると腕でみると同じ筋(屈筋群)を使っているわけで、拮抗する筋(伸筋群)はほとんど使っていないのです。ところが、この運動動作を片方の腕だけで、胸の中央で引きも押しもせずに行うと、腕の伸筋群と屈筋の両方の筋群に力が入ります。

筋肉が痛いくらいに力が入っているわけです。入っていますけれども、実際には目の前では全然動いていない。さらには、その位置から右や左に動かしていくこともできます。実際にベンチプレス動作の!00kgなら、100kgの力を入れたままで、左右水平方向への動きができるのです。

-太極拳みたいですね。

高柳:そうなんです。太極拳の動きと似ている。そうやって考えていくと、よく行われている古武道などでは、動きは非常にゆっくりでそう大きなものではありませんが、手や足を触れてみると、筋が緊張しているというか活動しているのがわかります。

重量物の負荷を使わないので、器具がいらないのですが、動きながらですからアイソメトリックではないのです。また、太極拳そのものが、長い歴史を有するからだの動きで、呼吸を止めずにゆっくりとした動きで、なおかつ、筋は緊張している。逆に言えば、太極拳をこういう視点で分析すると、その動きの仕組みがある程度わかるかもしれません。

丹羽:太極拳を中国で勉強してきた人がいて、指導にきてもらえるようお願いしています。その人に聞くと、太極拳では表面筋電図を用いた研究はあまりないようです。その先生のからだで太極拳の動作でどういうふうに拮抗筋が動いているかを調べさせてもらいたいと思っています。』

『丹羽:今の高柳先生が片手で胸の前で行った運動は、これは脳がやっているわけです。ですから私が「意識」というのはそういうことです。本人としては「無意識」でしょうが、実際には「意識」でコントロールされている。こういう「意識」をいかにトレーニングさせるか。高柳先生はアーチェリーをやっていますから、上肢を伸ばして、屈筋群と伸筋群を瞬間的に両方とも硬くすることは簡単にできます。

また、腕を伸ばし、弓を持ったようにして、手は空中で固定させたまま、肘を内旋・外旋させることもできます。手で動かない物を持って固定させるとやりやすいのですが、手を固定しないとなかなかできない(写真2)。高柳先生はアーチェリーをやるときにこういう動作をされているので、簡単にできるけれど、私は最初はできなかった。それで悔しくて一生懸命練習したらできるようになりました。

高柳:3次元的な動きですね。肩は内旋し、肘は外側に向け前腕を回外します。

丹羽:通常はとは異なる動きだから、動かし方のソフトが脳にない。だから、すぐにはできない。

高柳:1つは肘を返すという動作で、上腕に対しては前腕を回外する動きになります。しかし、手に弓を持っていますから、手を回外させると弓も一緒に捻じれてしまう。弓は垂直にして動かさず、手は空中で固定させたままで、前腕を外に返して、上腕は内に返すのを同時にやると、こういう動きができるということです。最初のうちは上腕を固定してから、前腕を外に返す。次に、前腕を外に返しながら上腕は内に返す。すると、肩は内旋して前腕が肘で外側に返る動きになります。

丹羽:初めはできなくても、何回も反復して練習していると、ある瞬間に、左右とも同時にできるようになるのです。

高柳:私はもともと右ききですが、弓は左で持ちます。右ではそういう動きはしないのですが、トレーニングしなくても右でも同じ動きができるようになる。これはよく言われる、右だけ鍛えると左の筋力もついてくるという相互性の支配が関係しています。

丹羽:このように、人間の動作は無意識でやっていることが多いけれど、実際には脳がコントロールしている。私は日常高柳先生の話をよく聞いていることもあって、運動現場では本当に真面目にやっているかどうか触って「ちゃんと硬くなるようにしなさいよ」と言ってやっているわけですが、意識して行えば、それより強い負荷でも同じくらい筋力は上がると考えた。

これはまったく直感なのです。なぜかと言うと、私は74歳なのですが、週2~3日散歩をしています。膝教室は歩き方を徹底的に教えているのですが、どういう歩き方を教えているのかというと、普通は何も意識していませんから、あまり下肢には力が入っていないで歩いています。そうではなく、後に残っているほうの膝を意識して伸ばすように指導しています。

このとき大腿四頭筋に力が入る。そういう指導で数年間やってきました。健康教室では高齢者に指導をするのですが、いろいろな運動で私に勝てる人は一人もいません。「先生、何か筋トレをやっているのでしょう」と言われるのですが、何もやっていません。ドクターでボクシングをやっている先生がいて、「先生はなぜそんなに筋肉があるのか?」と言われるのですが、ただ単に歩いているだけなのです。

昔はハンドボールをやっていましたが、ハンドボールをやめてから随分と時間が経っています。ただ散歩のときには意識して動かしているのです。常時ではなくて時々ですが、自分はどんな形で、どういう姿勢で歩いているとか、そういうことを意識して歩いてきた3年間くらいの結果として、本来なら落ちてくる筋肉が太くなった。

だから普通は座位で膝を伸ばしてしまうとなかなか大腿四頭筋に力が入りにくいのですが、私は簡単に力を入れることができます。だから、意識下で自由に筋肉を動かすことができるのではないかという言い方はおかしいかもしれませんが、日常意識して動かしていない普通の人は動いていても、十分コントロールができていないと考えられます。

-漫然と歩いている人とどこかで意識して歩いている人では、必ず差が出てくるということですね。

丹羽:そうです。だから、高柳先生がおっしゃったように、そういう指導法をすれば、ウェイトを使った運動でなくてもよいのではないかと考えられるわけです。もちろん動かし方をきちんと指導しなければいけませんが。われわれが行ったのはレッグエクステンションとレッグカールとレッグプレスの3つですが、図1のようにレッグプレスではきれいに出ないのです。要するにレッグプレスではさまざまな筋肉が働いていますから。

しかしレッグカールとレッグエクステンションの2つは単一の筋肉ですから、それぞれ使う筋を意識させたら、予想どおりの結果が出ました。一番きれいに出たのはレッグエクステンションでした。もちろんこの人たちに何か特別なことを教えたのではなくて、そのように動かすことだけを教えたわけです。

いずれにしろ臨床的なデータがかなりきっちりと出せて、痛みも改善され、歩行スピードも速くなったという結果が出てきました。

これはあくまでも私の意見ですが、こういうふうにまとめることができると思います。「私たちは地上で生活していますが、出生以来ほとんど重力を意識することなく生活しています。このため運動に際して筋が意識することなく動いています。重い物を持たなければ負荷が加わらないと思っています。

しかし宇宙から帰った野口聡一さんは階段を上がるときに自重を意識したと言っていると聞きました。このことを考えると人間は地上で生活するときに非常に効率的に動いており、60kgの体重をなんの意識もなく動かしています。常に自分の動きを意識することはそれだけ筋を働かせることになるのです。

健康寿命を考えると、ただ目的もなく歩くのではなく、筋を意識することで四肢体幹に安全に負荷をかけることができ、軽い負荷で十分目的は達成できると思います」。

これは自分の筋を再教育するという考え方です。そのエビデンスがたまたま出てきた。だから、軽い重りであってもいいわけですけれども、ただその軽いダンベルを持っても、使う筋肉を意識するかしないかで、筋力向上の度合いが違うということになります。そのメカニズムとして拮抗筋の働きがある。

この拮抗筋の話を聞いてから自分で気がついたのですが、動きすぎないようにブレーキがかかるということです。こういう現象はとくに下肢に関してわかりやすい。歩いていて後ろの膝を伸ばすとき、大腿四頭筋が働くけれど、拮抗筋のハムストリングスも働いて、ブレーキをかけている。こうしてスタビライズ(安定させる)されている。

臨床でもわかってきたのは腹筋です。腰が痛い人は多いのですが、座っても腰椎が反っている人が多い。どうすれば、それをやわらかく改善できるか。そこで、座ったままペルビックティルト(骨盤の前後傾運動)をさせる。すると背筋がゆるんできて、腰椎の前弯が改善されてくる。腹筋が働くようになると、背筋がゆるんでくる。

当たり前の話ですが、実際には、なかなか背筋がゆるめられない。たとえば立ったらたいていの人は背筋がカチカチになっています。背筋をゆるめてと言ってもなかなかできない。それが立ってペルビックティルトができるようになると、ゆるんでくる。

-腹筋が締まったときには背筋がゆるむ。

丹羽:そうです。しかし、ある時期は両方緊張している。だから筋電図ではわからないレベルかもしれませんが、ある緊張感をもってバランスをとりながら歩いたり、生活したりします。そういうものがすべてコントロールされている。

-脳で。

丹羽:そう。たとえば「いい姿勢をして」と言うと、腰椎を反らせてしまう人が多く、そうなると、バランスをとるため、首が前に屈曲します。そこから腕を引くようにすれば、肩甲骨が引っ張られ、胸が張り、頭の位置が起きてきてよくなります。こういうことも臨床的には行っていますが、本人がそうしようと意識していなくても、脳は姿勢をコントロールしていると言えるでしょう。

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