世界陸上大阪観察記|ニュースレターNO.175

いずるいずるが書いたよ! →最新記事一覧

セッションをご希望の方はこちら!

お問い合わせ

スポンサーリンク

大阪で行われた世界陸上も日本選手の不振というレッテルを貼られて終了しました。いろんなところで今回の成績について評価されているようですが、私なりに振り返ってみたいと思います。

まず、2007年4月16日 20:00、時事通信は、「世界陸上、目標はメダル5個=大阪対策本部設置で強化」という見出しで、次のような記事を発信しました。

『日本陸連は16日、役員改選後の新メンバーによる初の強化委員会を開き、世界選手権大阪大会(8月25日~9月2日)に向けた方針を決めた。高野進強化委員長は金メダルを含めたメダル目標数を、「一般種目で3つ、ロードとマラソン種目で2つのトータル5つ」と設定。さらに6~8種目で入賞を目指す。 メダルは女子マラソンで原裕美子(京セラ)、土佐礼子(三井住友海上)らが有力。

一般種目ではアテネ五輪男子ハンマー投げ金メダルの室伏広治(ミズノ)、男子棒高跳びの沢野大地(ニシスポーツ)、女子走り幅跳びの池田久美子(スズキ)らが期待される。 日本陸連は世界選手権に向けた強化を進めるため、「大阪対策本部」の設置を決定。沢木啓祐専務理事が本部長を務め、地元開催の世界選手権で日本勢の躍進を図る。さらに強化委員会の中に「ロード対策特別委員会」(木内敏夫委員長)を設置し、男子マラソン陣の対策などを練っていく。

なお、高野強化委員長は世界選手権まで男子短距離部長を兼任する。』 このコメントは、期待の選手がベストコンディションでベストパフォーマンスを発揮した場合であるということは言うまでもありません。

そして、大会が始まり次々と期待を裏切っていく結果が続きました。大会の終板、2007年8月31日の SANSPO.COMに、次のような記事が掲載されました。

 

『【世界陸上】不振続く日本勢に福田北京五輪団長が喝!

来年の北京五輪で日本選手団長を務める日本オリンピック委員会(JOCの福田富昭選手強化本部長(65)は30日、世界陸上選手権での日本勢の不振について、「選手はあまりスター意識に走らないで初心に立ち返って体力をつけてほしい」と注文を付けた。けいれんを起こすなど体調に異変が出て敗退する選手が目立ち、同本部長は「しっかり体力を身につけないと競り負ける。体力を(精神力や技術より)重視して取り組んでほしい」と希望した。

 

沢木団長は「戦略的トレ足りない」

世界選手権で極端な不振が続く日本選手団について沢木啓祐団長(63)は30日、理由の1つとして「予選や決勝を見据えた直前の戦略的トレーニングが足りない」との見解を示した。

同団長は男子100mの朝原宣治(大阪ガス)、同200mの末続慎吾(ミズノ)らの走りに波が大きかった例を出し、「予選や準決勝で強弱をつけて走る戦術が足りない」と説明。けいれんや脱水症状などが続くことには「スポーツ栄養剤などに頼りすぎるのはどうか。今後はマラソンや競歩で既に取り組んでいる運動生化学の研究が必要」とした。』

そして、2007年9月2日(日)21:32、大会が閉幕した後、時事通信社は「惨敗日本、北京で奮起を=団長ら総括会見、けいれん続出「悪夢のよう」-世界陸上」という見出しで、次のような記事を発信しました。

『世界陸上選手権の日本選手団を率いた沢木啓祐団長(日本陸連専務理事)と高野進監督(同強化委員長)は2日、長居陸上競技場内で記者会見し、大会を総括した。 日本は過去最多81選手を全種目に送り込んだが、メダルは女子マラソンの土佐礼子(三井住友海上)が獲得した銅1個。

自国開催でメダルなしの危機から辛うじて逃れた結果に、沢木団長は「中核になると思った選手がもろかったのは事実だが、男女のマラソンでは伝統が生きた。残る時間はわずかだが、北京五輪では頑張ってもらいたい」と選手に奮起を促した。 大会中、けいれんを起こす選手が続出した失態に、高野監督は「悪夢のような日が続いたのは予想外の結果。

多くの反省を課題として考えていきたい」と対策を講じていく考えを明らかにした。 開幕前に男子400mH障害の為末大(APF)を中心に複数の有力選手が盛り上げを図って活動してきた。これ対し、高野監督は「(活動の一環で)メダルに挑戦する意思を表明したが、自分のパフォーマンス(実力)以上の期待がどんどん膨らみ、少し背伸びをした状態できた。

それが心理的重圧になったのかもしれない。規制はしないが、言いたいことを言い、やりたいことをやるのではなく、よく選手と話し合いながら考えていく必要がある」と苦言とも取れる反応を示した。』

以上は、大会関係者の反省というか、言い訳のような弁・評価ですが、ホームページの中に、最も理解しやすい評価を見つけることができました。一般の方ですが、専門家よりも適切な評価をされています。それは以下のようです。

『今大阪で世界陸上が行われています。すぐ私は兵庫県に住んでいるのですぐ近くで行われていることになるのですが、それでも長居競技場まで1時間くらいはかかるので、もっぱらテレビでの観戦になっています。一流のアスリートの試合などそんなに簡単に見ることができないわけですが、仕事もあるので、仕方がないかなと思っています。

ところでこの灼熱の大阪でよく陸上競技なんかやるなあと思うのですが、一流のアスリートはやはり違うのか、こんな暑さの中でもすばらしい記録が出ています。それと世界全体のレベルが上がってきているのか、予選通過の記録が前回大会を大幅に上回っている競技が多いようです。一つは、アフリカの選手がアジアの産油国やヨーロッパの国に国籍を移して今大会に出場してきていることもありますし、また、男子走り高跳びのトマス選手のように他競技から転向して、いきなりすばらしい記録を残したりしていることもあると思います。

そんなこともあるのか、日本選手団の「不振」が目につく大会となっています。今の段階で入賞4(男子マラソンの3人と男子ハンマー投げの室伏選手)に止まっています。ホームアドバンテージを生かしきれていないということになりますが、全体的に見て、大阪の暑さにやられているのではないかと思います。ホームなのに暑さを理由とするのはおかしいと言う人がいますが、大阪の夏は、日本のどこよりも暑いということを忘れてしまっているのではないかと思います。

毎年のことですが国内で8月の平均気温が最も高いのは大阪なのです。那覇よりも暑いし、今年史上最高気温を記録した熊谷や多治見よりも平均気温では高いのです。気象庁のデータによれば、大阪の8月の平年の平均気温は28.4℃で日本で一番高く、ついで那覇と鹿児島の28.2℃、広島と岡山の27.9℃と続きます。

東日本は総じて気温は低く、一番高いのが東京の27.1℃で、今年これだけ暑かった関東地方でも平均気温が27℃を超えるポイントは他にはありません。今年の8月も最も平均気温が高いのは大阪で平均29.9℃となっています。

大阪が暑いのは、北を六甲山系と北摂丘陵、東を生駒山系、南を和泉葛城山系と、三方を比較的高い山(500~1000m)で囲まれており、盆地のような地形となっていることでフェーン現象が起こりやすいことや、大阪湾が南西側に口をあけているため、湿った暑い南西の風が吹き込んで、その空気が大阪平野から逃げていかないことなどがあげられます。

また都市特有のヒートアイランド現象で都心ほど暑くなっていることもあげられます。それと、夜に気温が下がらず、最低気温が25℃を下回らないいわゆる「熱帯夜」が多く、南西諸島や九州南部地域を除けば大阪が一番多くなっています(2001年~2005年の平均で44.6日。東京は29.4日)。

日本選手団はこの「大阪の暑さ対策」はできていたのでしょうか。国内だと思って、或いは東京と同じだと思っていたとしたら、少し考えが甘かったのではないかと思います。もちろんコンディションの整え方にはいろいろあって、暑いところでトレーニングをすればいいということではありません。

疲労が溜まるだけですし、事実日本選手の多くは涼しいところで調整を続けていたと聞いています。結果として選手が慣れない大阪の暑さに参っているのではないかと思ってしまいます。事実はよくわかりませんが、兵庫県出身でずっと関西を拠点として活動してきた短距離の朝原選手が比較的調子がいいのはこの暑さに慣れているからなのかもしれません。

暑さの話はこのくらいにして、マスコミは日本選手団の「不振」の理由をあれこれあげていますが、私は不振なのではなく、実力どおりの結果が出ているに過ぎないというのが印象です。400mHの為末選手は不調が伝えられており、女子走り幅跳びの池田選手も今シーズンのランキングは26位に過ぎません。

期待が高かった男子マラソンも世界で争える記録を持っている選手はなく、男子走り高跳びの醍醐選手も今期ベストが2m30cmで優勝争いに割っているには今一歩実力不足というところでした。一方、ハンマー投げの室伏選手は、今期は日本選手権に出場したのみで、大学院での勉学を優先しており、今大会は「健闘」したと言ってもいいかもしれません。短距離の末続選手も棒高跳びの沢野選手も競技中の痙攣が原因で実力を発揮することができませんでした。

実力のある選手が実力を発揮できなかったのなら仕方ありませんが、マスコミによって実力以上の結果を期待され、本来の力も発揮できずに終わってしまうのは見ていてかわいそうな気もします。その責任をマスコミは取るはずもなく、選手は、自信を失って今後の競技生活に影響がなければいいがと心配になります。

サッカーの日本代表のオシム監督も言っています。「若い選手が良いプレーをしたらメディアは書きたてる。でも少し調子が落ちてきたら一切書かない。するとその選手は一気に駄目になっていく。彼の人生にはトラウマが残るが、メディアは責任を取らない。」(木村元彦著「オシムの言葉」より)。もちろん選手の側の自覚も必要ですが、視聴率のために実力を誇張し、注目だけを集めさせるのはいかがなものかと思います。

もちろん健闘している選手も少なくありません。400mHの成迫選手は不運にも決勝進出が成りませんでしたが、世界で十分に戦っていけることを証明しましたし、世界との差が大きい男子中距離でも800mの19歳横田選手が、1次予選敗退ながら、自己ベストを大幅に更新し、将来が嘱望されるところです。

また、女子長距離の福士選手は相変わらずの積極的な走りで会場を沸かせ、男子100mの朝原選手は見事に準決勝進出を果たしています。また、彼も走る4x100mリレーは、見事日本新記録で決勝進出を果たし、史上初となるメダルを目指します。また明日行われる女子マラソンも実力上位の選手が揃っており、こちらも上位入賞が期待できます。

一方、各種目の決勝に目を向けると、一流と一流が力と力、技と技をぶつけ合う姿には見ていて美しいものを感じます。しびれるというか痛快感があるというのか、ただただすごいの一言に尽きます。陸上競技というのは、ただ跳ぶだけ、ただ走るだけ、ただ投げるだけなのに、その技は芸術の域を超えています。1cm、0.01秒を争いしのぎを削る姿には感動すら覚えます。スポーツの醍醐味は結局こんなところにもあるのかもしれません。』

今回の世界陸上は、自国開催という事があり、開催国として全種目にエントリーしました。したがって、もともと予選通過ラインにはるか手の届かないレベルの種目も多くありましたが、そのような選手たちは、自己新を目指して参加したものと思われます。ブロック別に、私なりに評価してみました。

 

1.マラソン

男子は尾方(5位)、大崎(6位)、諏訪(7位)、女子は土佐(3位)、嶋原(6位)と、5名の入賞者を出した。土佐は、唯一のメダル獲得となった。中でも、大崎は7月までまったく走れず、高校の恩師が私のところに何とかならないかと連れてきたこともあり、何よりうれしい結果であった。股関節をいためていたのであるが、その原因が走り方にあるとの判断で、身体のバランス調整とランニングの指導で走れるようになり、わずか1.5ヶ月で今回の結果となった。

男女共に暑さの中でのサバイバルレースとされたが、両レースとも当日は、いつもと違い晴天でなかったことがまだ救いであった。普段なら、レースの時間帯はあんなものではなく、本当に暑くて蒸し暑くなっていたのに、天も気を使ったのかもしれない。男女とも、普通の出来ではなかったか。

 

2.スプリント

末績(二次予選落ち)、金丸(肉離れ)を除けば、それなりの走りではなかったか。金丸の肉離れは、彼のフォームの欠点が災いしたように見えた。足先を前に振り出すのが特徴であるが、伸びた脚に身体が突っ込んだように見えた(もちろん、実際のところは分からないが)。女子は、400mの丹野だけがベストの走りをしたと思われる。

 

3.中距離

男子800mの横田は積極的に走って自己新、もっと速いペースのレースを経験すればと、楽しみな選手であった。女子800mの選手は、中距離の走りではなく、基本的にスピードの出る走りを教えてあげないとどうしようもないと思われた。1500mは、男女ともスピードの出る走り方を習得すべきで、日本の長距離走
の走りではどうしようもない。

 

4.長距離(3000mSC)

中距離と同様に、走り方がまったく違う。早く気づかなければ、永遠に追いつけないだろう。長距離は特別な種目ではなく、スプリントの延長の種目である。それが理解できていないから、あのようなスピードの出ない走りになるのだろう。能力はあるのに、走りを指導できない指導者が情けない。外国選手の走りを見れば、自分との違いが分かるはずだし、指導者はもっと明確に分かるはずである。

女子の障害は、早狩はハードリングに問題があった。解説者はうまいといっていたが、何を見ていたのか、右膝が下がって跳んでいたので、ぶつけないか気になっていたが、結果的にその右膝をぶつけて転倒した。もう一人の選手は、水豪を跳べなかった。着地が両足同時着地のようになり、次の一歩が水中にあって、一歩を出せずに転倒していた。ランニングのリズムと跳躍力の強化が必要に感じた。

 

5.ハードル

為末(予選落ち)は、走力の強化、ハードル間のインターバルの改善ができたといっていたが、まったく見られず期待はずれといわれるが、記録的にはまずまずではなかったか。運をもらえなかったのだろう。彼以外の選手は、それなりの結果ではなかったか。400mHの成迫も110mHの内藤も実力どおりの力を発揮したと思う。

 

6.競歩

男子50km山崎が誘導ミスという不運にあったが、全体としては普通の出来ではなかったか。

 

7.リレー

男子の4x100mリレー(5位)は、予選、決勝と日本新記録で、素晴らしい走りを見せてくれた。特に、朝原の快走が目を引いた。過去にないほどの快走に思えた。朝原の走りが日本記録につながったように思えるので、北京に彼が出なければ、同様の結果は期待できないだろう。男子のマイルリレーは、金丸の欠場がそのままの結果となり、予選落ち。代役との走力の差がそのままタイムに出たし、結果もそのように出たと思う。400mの走り方・フォームを考え直すべきと思われた。日本選手の腕振りは横に流れる傾向がある。特に、女子は顕著に見られる。外国選手のコンパクトなリラックスした縦方向の腕振りを見習うべきだろう。

 

8.跳躍

醍醐のふくらはぎ痙攣、池田の予選落ち以外は、それなりの結果のように思う。池田の助走が未だに決まらないのが不思議でならない。5月に6m73cmを跳んで、日本選手権で跳べなくなり、その状態がそのまま改善されずに終わった感じを受ける。最後の4歩というが、なぜそこにこだわるのか、なぜ改善できないのか分からない。原因が分かれば解決するはずなのに。

 

9.投擲

力とスピードに差がありすぎる。もともと分かっていたことであるが、誰も自己記録に近づけなかったことに反省があろう。特に、スローイングのスピードに違いが顕著なので、そのベースとなる筋力をさらに高め、そこに外国選手に負けないスピードをつけることを考えるべきであろう。技術より、体力アップを目指すべきか。室伏は、現状としては、上出来の結果を残したように思われるし、北京につながるようにも思えた。全体の動きはまとまりのあるものに見えたし、後は以前のような回転スピードが戻ればまったく問題がないように思えた。今季2戦目であるのだから。

 

10.混成

ほとんど放映されず、残念である。日本選手の結果というよりも、女子七種競技のスウェーデンのクリュフトの競技パフォーマンスは紹介すべきであったと思う。
大まかに、ブロックごとの評価をしてみましたが、大会前に入賞、メダルを期待された選手たちがことごとく期待を裏切ったことが、日本選手の大不振と取り上げられることになりました。この大不振の原因は、3つ考えられるのではないでしょうか。

1つは、大阪の夏をナメていたこと、1つは試合計画の間違い、1つは気負いすぎです。

1つ目の、大阪の夏をナメていたことについては、大阪の夏は、大阪に住めば分かります。大阪の熱帯夜は夜中も30度を越えるのです。事実、私の部屋の湿温計はいまだ朝も室温31度、湿度68%をさしています。暑いというのではなく、「蒸し暑い」という「蒸し暑さ」にやられるのです。

この「蒸し暑さ」に対する対策ができていたかが問題です。大阪で合宿したと聞いた事がありません。地元の利といわれましたが、何人の選手が大阪の環境に、長居という環境に慣れ親しんでいたのでしょうか。その環境の中で、長

居のトラックを走りなれていたのでしょうか。今回最高の成績を出したアメリカの選手たちが唯一事前合宿を大阪体育大学で行いました。わが母校であり、アメリカが合宿すると聞いたときに、ほとんどの人は、なぜあんな暑いところで合宿するのか、不思議がったものです。山の上にあるのですが、大阪湾から蒸し暑い風が吹き、日よけするところがほとんどないところです。結果的に、この大阪での事前合宿が身体を大阪の環境に順応させたのでしょうか。

事実、タイソン・ゲイは、アメリカでもこんな暑さの中で練習していたので、まったく問題はないといっていました。イシンバウエは、暗くて寒い環境で暮らす我々にはこんなに暖かいところは気持ちがいいといっていました。マラソンは、大会初日で、早朝で、一発勝負なので、暑さを一時感じるだけで終わりますが、トラック・フィールドの選手は数日間滞在している中で、恐らくこの蒸し暑さにやられたのかもしれません。

事実、痙攣を起こした選手が多く、その原因は軽度の熱中症であったと思われます。水分は、汗をかいて失った分だけ水分を補給しても、塩分が足りなくなるといわれます。その塩分の補給が十分であったかも問われるところです。また、体重管理もできていたでしょうか。3%体重が減少すると、変調をきたしやすい状態に陥るといわれ、体重の減少は2%以内にとどめるようにといわれているので、日々の体重管理ができていたかも問われるところです。

大阪の夏の暑さになれるためには、やはり大阪の蒸し暑さを数多く経験しておくべきであったように思います。数年前から、合宿の計画が立てられたはずです。ここに、地元の利を活かせなかった最大の失敗の原因があるように思われます(実際に、大阪で合宿が行われなかったのかどうかは定かではない)。

地元とは、狭くて広い日本ではなく、大阪の長居の地です。そこに勘違いはなかったでしょうか。したがって、大阪の蒸し暑さに負けたから結果もそのようなものになっているのでしょう。結果に嘘はないのです。先に紹介した、一般の方の感想は実に的を得たものと思います。

2つ目の試合計画の間違いは、トレーニング計画も含め、世界を目指す、オリンピックを目指す試合計画がなされていないということです。世界選手権やオリンピックは、基本的に8月の夏に行われるのです。このことが理解できていません。

6月に(今年は6/29-7/1)日本か選手権をやっていますが、なぜ6月なのか、なぜ6月にピークを合わせるようにしているのか分かりません。世界選手権やオリンピックを意識しているのなら、毎年8月にピークを持ってくるように8月に日本選手権をやるべきではないでしょうか。恐らく、暑いからという理由だと思いますが、そこになぜ夜にやろうという考え方ができないのでしょうか。

暑いときに暑い時間帯にやるのではなく、暑い時期の涼しい時間帯(?)にやればいいだけです。人の身体機能は、8月に最高の能力を発揮しやすいといわれています。それは、インターハイを見ればわかることです。暑いから記録が出ないのではなく、暑さを苦にしなければ暑さの中でハイパフォーマンスを発揮できるのです。

このことも、地元の利を活かせなかった原因にもなっているのではないかと思われます。

3つ目の気負いすぎは、結果が悪いとよく言われることですが、選手がスター扱いされてその気になりすぎたのではないかということです。TBSが大きく張り出している侍のポスターに登場する4名のうち、3名が予選落ちしたのです。彼らは、陸上競技を盛り上げるために、努力してくれた選手たちです。

その意味では、陸連も彼らに感謝しなければならないでしょう。その一方で、マスコミやテレビで自分たちが取り上げられてくると、やはり何かが違ってくる。為末は、それが終板プレッシャーに感じてきたと述べていますが、それも不振というより、自分の力を発揮できなかった大きな要因と思われます。

私は、彼らの大会での行動を見ていて、謙虚に挑戦する気持ちが見られないと同時に、意気込みすぎを感じていました。こんなとき、頭の中ではさまざまなことを考えており、マグネシウムが使われ、マグネシウムが大量に使われると、同時にカルシウムも多量に使われてしまう。

そうする、痙攣などがおきやすいと以前に聞いた事があります。そんな状態になっていたのではないでしょうか。選手を盛り上げることと、おだてることとは違うと思います。

またアナウンサーの冷静さのなさに苦言を呈したい。サッカーのゴールシーンをイメージさせるような気張った語りは止めてほしい。競技は見るものであり、耳障りな解説を聞くものではありません。また、野球の中継と同様に、選手の顔のアップをとりたがる。競技を見ているものにとっては、非常に不愉快です。

たった一人の選手ではなく、もっと全体も見たいのです。中継するなら、もっと競技種目の特性や陸上競技の見方というものを考えて中継してほしいものです。アスリートがマスコミに取り上げられることは、決してマイナスにはならないと思いますが、マスコミ側は営業であり、何かサプライズがあるほうが視聴率も上がってうれしいわけで、それに惑わされないでほしいものです。

自分を見失わず、自分の夢に向かって努力を続けるアスリートであってほしい。そうすれば、運も授けられるはずだと思います。

最後に、以前私が指導していた選手から次のようなメールが届いたので紹介します。

『大阪の世界陸上が終わりました。競技を離れて3年、以前から魚住先生が話されていたことが、次々と現実になり驚いているばかりです。また、先生の話を聞いていただけに今回の結果は予想していたとおりのものになりました。

 

①国内で8月に大きな大会を行わない限り、国際大会で通用しない。

「現在、8月の大きな試合といえばインターハイぐらい。日本選手権や国体など国内のビッグゲームと呼ばれるものは、6月と10月。選手の身体には、これにピーク合わせるリズムができあがっているので短期間の周期(1年程度)で8月にピークを合わせるようにしても調整ミスが起こりやすい。

現在、遠征ではなくヨーロッパを拠点にグランプリを転戦する選手が少ないことを考えると、国内のビッグゲームを8月に持ってこなければ、世界選手権やオリンピックで勝負することはできない。」

これは、確かシドニー五輪前後に先生が話されていたことだと思います。先生は、過去に遡ってすべての国内レースの記録をデータベース化し、それにもとづき話されていました。確かに、現在の日本記録を見ると8月に記録されている種目がほとんどありません。これは、競技会がないことと世界大会で結果が出せていないことを物語っているのかもしれません。

 

②レース中の筋痙攣は筋肉中のマグネシウム量など分子レベルでの問題である。

1997年 当時400m世界記録保持者のマジック・ジョンソンと100m世界記録保持者のドノバン・ベイリーが150mで一騎打ちのレースを行い、マジック・ジョンソンが筋痙攣で途中棄権しました。その後のニュースレターの中で、先生は、「筋痙攣の原因が筋肉中のマグネシウム量の不足など分子レベルの問題であると指摘されていました。

また、これらの物質は緊張やストレスなどによって大量に消費されるため、選手の近くにいるコーチなどはリラックスを与える環境や声かけが大切である」と分子栄養学の先生の意見も紹介しながら述べられていました。世界陸上の競技後、多くの選手が「メダルを取る」と言い続けるのが苦しかったなどと話をしているのを聞くと、メンタル面だけではなく分子栄養学の観点からも考察が必要なのではないかと感じました。

 

③中長距離種目は、400mで50秒を切るスプリントがなければ勝負にならない。

「1500mにしても、5000mにしても世界のトップはラスト1周を51秒~52秒で走ってくる。イーブンペースで記録を狙うのではなく、順位の勝負をするのであれば、スプリント力がなければ話にならない。最低でもフラットレースで50秒を切るくらいのスプリントが必要になってくる。持久力で勝負できる時代ではない」

この話を聞いたのは、アトランタオリンピック後ですから今から10年近く前です。今回の世界陸上では、日本選手の身体スタイルやフォームを見ただけで、違いは明らかでした。そして、結果も予想されたとおりのものでした。

他にも、長距離選手のフォームについてや短距離のスタート時の加速の仕方、ウォーミング・アップについてなど、先生から聞かされていた話がすべて目の前で展開され、そして結果についても先生の話されていた通りとなり、ただただ驚くばかりです。

先生がライフワークとされているマトヴェーエフ氏のピリオダイゼーション理論を読んでいくと、今の日本陸上界に必要なのは、短期的なトレーニング計画ではなくレベルの高いアスリートがオリンピックや世界選手権で勝負するためのピリオダイゼーションなのではないかと思います。

大阪の世界選手権、選手達は本当によく頑張ったと思います。私たちの想像を超える努力やレースにかける気持ちがあったと思うだけに、その努力や気持ちが結果に結びつく競技環境を整えることができればと感じました。

大阪の世界陸上を見て、ついつい書かずにはいられなくなりました。』

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
いいね ! してね!

Twitter で

目的別記事

お問い合わせはこちら

お問い合わせ

カテゴリー

シェイプアップ ダイエット トレーニング 痛みの改善 スポーツ選手 健康 学生向け おもしろ 魚住廣信 家族


Izuru Style
Tweets by izuru_style
Copyright 2017 神戸パーソナルトレーニングスタジオ Izuru Style