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為末大のハードラー進化論|ニュースレターNO.178

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先日の日曜日、平成スポーツトレーナー専門学校の第1回の入試がありました。今回受験してくれた方たちは、先生や知人の紹介で、本学の内容がよく分かり、将来本物のスポーツトレーナーとして活動を目指す人たちがほとんどでした。実に、頼もしく嬉しいことです。編入などもできますので、自分の技量を上げたい方や本物志向の方はぜひ一度学校に来て、授業を体験してください。いつでもかまいません。気楽にお問い合わせください。

さて、先日毎日新聞の朝刊で「為末大のハードラー進化論」なる記事を見ました。そういえば、不定期に書かれるもので、興味深く読んでおりました。今年の世界陸上は、予選落ちと言う結果に終わりましたが、北京に向けて何を考えているのか、どうしてベストパフォーマンスができなかったのか、今年3月の記事と一緒に読むとその原因が分かるように思います。

彼は、昨年はハードルを捨てて走力アップに取り組み、結果としてスピードがついたと公表していました。しかし、実際には、100mと200mのベストは出たのですが、肝心な400mの走力は上げることができませんでした。

彼の400mのベストタイムは、高校3年生のとき(96年)の45”94、昨年は46”41でした。この辺りに錯覚があった気がします。求めるスピードは400mのスピードであったはずで、それが100mと200mでベストが出たものだから、400mも速くなったと勘違いしていたのではないでしょうか。

400mは100mと200mとは、まったく違った能力が必要です。スピード持久力が肝心な能力なのです。ハードリングはうまいのですから、400mの走力でトップ選手との差が大きいことを自覚できればいいのにと思います。

後、気になるのはスプリントというものに哲学を持たせるようなイメージがすることです。身体の細部までにこだわることは分からなくはないのですが、意識はすればするほど動きの邪魔になるように思うのですが、どうでしょうか。もっと単純に、スピードとは、ピッチ×ストライドであり、どうすればピッチが上がり、ストライドが伸びるのか、基本的なところに戻ったほうが良いように思うのですが、どうでしょうか。

私が感じることは、走るという動作を難しく考え過ぎているように思うことです。せっかく能力があるのだから、もっと走るということをダイナミックに捉えてチャレンジしてほしいものです。例えば、走幅跳や三段跳をしてみるとか。頭の中で考えるより、積極的に身体を動かすことだと思います。

皆さんもこの記事を読まれて、指導者として選手としていろんな考えがあると思いますが、どのように捉えるか、考えるかによってやはり結果も良いか悪いか、いずれかに分かれるように思います。指導者にとっては、選手を指導する上で参考になる記事だと思います。

毎日新聞朝刊 2007.03.07(水)

『人間は二つの足を使って歩き、そして走る。考えなくてもできてしまう「二足走行」について昨年、ハードルを封印している間に考え続けた。

足は体の中心より外側にずれた位置にある。だから人間が二足走行をすると、コマに回転軸が二つ存在するような状態になってしまう。片方の足を地面につけて、そこを中心に体を回転させると、今度は逆の足で止めて反対回りに回転させなければならない。走るためにはそれを繰り返す必要がある。

昨年、今まで体感したことのないようなスピードで走った時、骨盤の周辺に、バットを左右にぶんぶんスイングする時のような大きな遠心力を感じた。それだけ大きな力に振り回されることなく前進するには、足を外側について踏ん張り、上半身のねじれをしっかり支えなければならない。

一番痛感したのは腹回りの弱さだった。回転を止めるために動いているのは、外から見える腹筋ではなくて、体の奥の方。それから体側(体の横)の腹筋だ。前回のこのコラムで、今年は体幹を重点的に強化していると書いたが、その一因がここにある。

2月にナショナルトレーニングセンター(東京)で合宿をした時に、走りを撮影し動作解析をしたデータを見た。意外だったのは、思ったほど足が後方へけり出されていなかった点だ。私は強い力で後方に地面を押して歩幅を稼ぎ、170センチの身長ながらハードル間(35m)を13歩で走っている。後ろ向きに力が加わっているのだから、足がそのまま後方に流れてしまってもおかしくないが、実際はそうなっていなかった。

体が外側に振られる力を腹回りの筋肉が止めることによって、足にもそのエネルギーが伝わる。腹筋を鍛えることで、足が地面から離れる瞬間、後ろ足を内側へねじ込む力が生まれたようだ。それが結果的に足を流さない作用をしていると今は想像している。

二足歩行によって両手が自由になり、頭脳も進化させた。進化した頭脳が、二足歩行が生んだ弊害を取り除く方法を考える。人間の進化というのは不思議だ。』

毎日新聞朝刊2007.10.17.(水)

『これまでずっと「力の伝達」について考えてきた。黒人選手に比べ、我々日本人が最も劣っているのは、根底にみなぎるエネルギーだと思う。彼らは軽く打った拳や踏み込んだ足に、とてつもない力が宿っている。これまで幾度となく対戦して、そう感じてきた。

エネルギー量そのものを大きくするためにさまざまな工夫をしてきたが、到底彼らには及ばない。だったらエネルギーを漏れなく使おうと、力の伝達の効率を求めるところに行きついている。

力が効率よく伝達するには、ムチのような連動が重要だ。根底で生まれたエネルギーがだんだんと伝達され、最終的に末端に伝わる。だから、ヒップホップダンスなどに取り組み、とにかく全身がしなるように使えるよう努力してきた。

トレーニングの成果もあって、今年はきれいに中央から力が伝達され、体が自由に動かせるような感触があった。だが同時に、無力感も感じた。思いきり踏んでいるのに、地面を軽くしか踏めていないような感じ。擬音語で言えば、突き抜けるような「ズドン」ではなく、「パチン」と何かをたたいているような弱々しい踏み込みだった。

何かがしなり力を伝達していくには、根元がしっかりと固まっていなければならない。ムチにしっかりとした握り手がついているように、竹の根が四方にがっちりと地面をかんで広がっているように、しなりは根元を固定することによって生まれる。この1年間のトレーニングは、その重要な根元の部分が抜け落ちていたのだと思う。だから弱々しく、ただ単に動きが連動しているにすぎなかった。

体の根元は、骨盤の真ん中あたりにある部分だと思っている。ここをどれだけ固定するかが、力の伝達のかぎだ。この秋からはこの根元を鍛え、固めるためにさまざまなトレーニングを行うつもりだ。剣道、空手、相撲。みな、古来「丹田(たんでん)」と呼ばれた部分を技術の核としている。この部分が大声を出している時に働くことにも気が付いた。思えば、武道はみなインパクトの瞬間に発声を伴っている。発声を伴い腹部を締め上げるようなトレーニングも多用したい。』

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