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トレーニング処方|ニュースレターNO.187

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マトヴェーエフ氏の著書「ロシア体育・スポーツトレーニングの理論と方法論」がついに完成しました。一般書店には20日以降に出るようです。定価は5000円(税別)になりました。会員の方には8掛けの4000円(税別)で提供できるようです。ご希望の方は御連絡ください。

すでに、購入を希望している方にはもうすぐ届くと思います。完成品を見て、感動しております。マトヴェーエフ氏にも見ていただきたかったのですが、これはかなわぬことになってしまい残念でなりません。できるだけ多くの指導者の方々に読んでいただき、スポーツトレーニングの理論と方法論について基本的な考え方を理解し、指導に大いに役立てていただきたいと思います。

さて、今回は、久しぶりにトレーニングの指導に役立つ資料をご紹介したいと思います。

1月送られてきたランニング学研究Vol.19 No.2(2008)に、第19回ランニング学会の報告として「中長距離種目のパフォーマンス向上にランニング科学を用いる-記録を高めるトレーニング処方」という論文が掲載されていました。報告者は、大阪体育大学の豊岡示朗教授でした。

豊岡先生は、私の大学時代の恩師で、現在もいろいろ教えをいただいている方です。大学時代、先生から教えていただいたいろんなデータをもとに、高校生を指導していた事があり、研究データを現場でどのように活用するか、といったことをやっていました。

今回、この論文を目にして気が付いたことですが、長距離トレーニングにおいてもかなり科学的なデータが変わってきたことに気が付きました。筋力やスピード-筋力のほうに目が行っておりましたが、持久力についてももっと勉強する必要があると反省したしだいです。

この論文を読んで役立つことは、6分間走のテストでその人の体重当たりの最大酸素摂取量が推定でき、それを基準にしてトレーニングの強度が簡単に設定できるようになるということです。ぜひ、最後まで目を通してみてください。きっと、役立つと思います。

『スポーツ科学の発展に伴い長距離、マラソンの記録と種々の生理学的測定値との関連が明らかにされてきた。特に、体重当たり最大酸素摂取量、最大酸素摂取量で走れるスピード(vVo2max)と乳酸閾値(Lactate Threshold)、血中乳酸4ミリモル(Onset of Blood Lactate Accumulation)の記録に対する寄与率が高いことが明らかにされている。

それ故、これらの指標を高めるトレーニングの実践が好記録を生むことにつながる。だが、各因子を調べるには測定機器と技術が必要であり、多人数の選手を見ている現場の指導者や市民ランナーが、各個人のこれらの値を知ることは容易ではない。

しかしながら、研究は進み、生理学的測定をしなくても、長距離走の記録がわかるとOBLAスピードを予測できる方法や、タイムトライヤルの実施でVo2maxやvVo2maxを求めることが可能になっている。

 

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1.長距離走タイムと生理学的尺度

70年代は体重当たり最大酸素摂取量、80年代はLT、OBLA、90年代はvVo2maxが長距離走やマラソンの記録と密接に関連する尺度として明らかにされてきた。各尺度と記録の相関係数には幅があるものの、時代の経過に伴って記録に対する各指標の寄与率が向上してきている。

 

2.Vo2maxと任意の%Vo2maxを知る推定法

ランニングを用いてVo2maxを推定するフィールドテストに5分間走や12分間走がある。特に5分間走テストの特徴は、走行距離を5分で除して得たスピードを100%とした平均スピード(%Vo)に対する任意の%Voと%Vo2maxの関係が、概ねY=Xとなる事である。

この結果は、10~20歳代のどのレベルのランナーにとっても同じ様にして、トレーニング強度がスピード(m/分)で求められる。そのためには1回のタイムトライヤルが必要となる。例えば5分間走で1500m走った人の100%スピードは1500m/5分=300m。70%Vo2max強度で持続走を行う場合のスピードは、70%Voと予測され、その速度は300mx0.7=210m/分となる。

1km当たりでは4分45秒のペースになる。Vo2maxの改善には40~100%Vo2max強度が必要と報告されている。この方法は持続走やインターバルトレーニングなどのスピード設定に用いられよう。

 

3.vVo2max(最大酸素摂取量で走れるスピード)の見い出し方

最大酸素摂取量は酸素運搬系と消費系の能力をみたものであり、ランニングエコノミーや血中乳酸の動態を含まないので長距離走記録との相関は、他の尺度より低い。だが、vVo2maxは最大酸素摂取量とランニングエコノミーを含むので記録との相関係数はより高くなる。

それ故、vVo2maxを高めるトレーニングは、800m~マラソンランナーまでの必須トレーニングとなる。このトレーニングにより、vVo2maxスピード、LTスピード、さらにランニングエコノミーの改善が起こる。

vVo2maxを求める方法は、トラックや距離の分かるグランドや公園での6分間走テストである。Billatらの研究によれば、この方法で求めた平均スピードが最大酸素摂取量で走れる速度になるという。

例えば、6分で2000mを走ったとすると、その平均スピードは2000m/360秒=5.55m/秒となる。400m当たりのタイムに変換すると、400/5.55=72秒がvVo2maxとなる。このトレーニングの進め方は、走る距離を200mから始めて数回のトレーニングで400mへと延ばし、最終的には4~8週間にわたり、週1回、3分間走(6分間走距離/2として求める)x5(休息は3分ジョッグ)にする事が理想的と考えられている。

vVo2maxはどのレベルのランナーでも同じようにして、6分間走の実施で求められる。しかし、身体的な「きつさ」に加え、心理的にも「つらい」ランニングとなるので中高年者には勧めにくい。

 

4.LT(乳酸閾値)とOBLA(血中乳酸4ミリモル)スピードの推定

LT、OBLAを実測して得るには、他の尺度と同じように装置や測定器具が必要となり、費用と時間も要する。各自の長距離走タイムを基準にして求める事が出来ると、指導者やランナーにとって強度設定が容易になる。

アメリカのランニングコーチで、運動生理学者のジャック・ダニエルは、彼の著書「ランニングの公式」の中で長距離走の記録から簡単にOBLAを知ることのできるVDOT表を作成している。VDOTとはV-dot-O2-maxの略であるが、単なる生理学的なVo2maxではない。

そのVODTは次の3点-①レースタイム(これは、ランナーの心理、乳酸カーブ、Vo2maxを含む)、②スピードとVo2の関係、③%Vo2maxとランニング時間の関係-を加味して作成されたものである。OBLAスピードを知るには、各自の1500m~マラソンまでの記録からVDOTを求め、そのVDOTに対するトレーニング強度の一覧表から得ることが出来る。加えて、他の尺度でこの閾値を表すと86~88%Vo2max、88~92%vVo2maxに近いと述べている

また、松生と豊岡は5000m記録の平均スピードの92~93%速度が、4ミリモルスピードに相当すると報告している。この方法も簡単な計算で閾値スピードが求められる。

LTスピードとは、血中乳酸濃度がそれまでの速度に対する反応と異なり、明らかに増加を始めるポイントを意味する。このスピードは、①酸化代謝による乳酸分解能力、②血液からの乳酸除去能力、③ランニングエコノミー-の情報を含むので競技記録と密接に関連している。アンダーソンによれば、5000mのレース速度はLTスピードより5%速く、10000mのそれはLTスピードより約25%速いと述べている。

この%を基にして、5kmを20分と16分20秒で走るランナーのそれぞれのLTスピードを1000m当たりで算出すると、4分13秒と3分26秒になる。このようにして求めたLTスピードは、前述したダニエルの閾値速度に近似し(1000m当たりで3.6秒速い)、OBLAに匹敵した。それ故、この基準で強度を設定する場合、注意が必要である。

LTスピードを高めるトレーニングは、これまで、中程度強度での持続走(筋細胞の酸化エネルギーシステムを高める)が主流であった。しかしながら、最近の研究は、血液から乳酸を除去する筋肉の能力を高める(MCTIを増加させる)ことも、効果的である事を示している。

このためには筋肉を高い乳酸濃度に曝し、かつ、酸化過程の酵素活性にインパクトを与えることが必要と考えられている。具体的には、2~10㎞までのレーススピードでの走行や85~90%Vo2max強度といった高負荷トレーニングとなる。

さらに、LTスピード改善の方法として、筋力トレーニングやプライオメトリックトレーニング(ランニングエコノミーを高める)、また、スプリントタイプのトレーニング(Vo2maxと筋の酸化能力を高める)も勧められている。

 

5.まとめ

種々の生理学的尺度を用いたトレーニング強度の設定は、競技記録を求め、タイムトライヤルの実施、資料の応用などで求められる。それによるトレーニング処方は、効果が明確にされているのでミスの少ない実践が可能になる。しかしながら、強度は把握できるものの、その強度での反復回数、時間、頻度に関しては、これらの条件の組み合わせが数多く生じるので科学的な知見は少ない。

また、研究結果をそのまま現場のトレーニングに応用しても、うまく行かない事も生じてくる。ランニング科学の情報は増えたが、トレーニング処方に組み込むには試行錯誤を繰り返して調整することが必要となろう。

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