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腰痛は怒りである|ニュースレターNO.202

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前回からお知らせしていますリ-コンディショニング講座ですが、11月は後1~2名でいっぱいですが、12月は今のところまだ余裕がありますので、ご希望の方は早いうちに申し込みください。2週間があっという間にやってくるので、ニュースレターの準備も大変です。しかし、いろんな情報を皆さんに知っていただき、尐しでも現場に役立てていただけたら嬉しく思います。

さて、前回はサーノ博士のTMS(緊張性筋炎症候群)理論について紹介しましたが、今回も引き続きTMSについてです。今回は、サーノ博士の著書の翻訳者である長谷川淳史氏の著書(腰痛は<怒り>である:春秋社2006)から、TMSについてもっとわかりやすく説明されているところを紹介したいと思います。Q&A形式で書かれているので、非常にわかりやすいと思います。その一部を紹介しますので、興味のある方はぜひ著書をお読みください。

TMS理論は、「痛み」に対する対処法として、一つの示唆を与えてくれるものです。けしてすべての痛みがTMSによるものではありませんが、そのような考え方を持っていることは、大いに助けになるはずです。常に話していることですが、けして何か一つの考え方や理論がすべてを解決してくれるものなどありえません。そういうことから、いろんな考え方を受け入れ、TPOで頭を柔軟にしてその考えや理論を取り入れてほしいと思います。

『-いよいよサーノ博士の治療法に入るわけですが、ところで「TMS」とは何の略ですか?

◆「Ewnsion Myositis Syndrome」の頭文字からとった略称で、日本語に訳すと「緊張性筋炎症候群」ということになります。ただし、「筋炎」といっても筋肉に「炎症」があるという意味ではなく、筋肉内に何らかの変化があるという意味でしかありません。この理論を開発したジョン・E・サーノ博士は、TMSの定義を「痛みを伴う筋肉の生理的変化」としています。

-症候群と呼ぶからには、文字どおりいくつかの症状が集まっているという意味ですか?

◆そのとおりです。かなり乱暴に聞こえるかもしれませんが、これまでは単独の病気が引き起こすと考えられていた筋骨格系のさまざまな症状を、ひとつの症候群としてまとめてしまったのです。

たとえば、肩こりと呼ばれている首や肩、背中の痛みをはじめ、腰痛、臀部痛、手足の痛みやしびれ、さらには四十肩、五十肩と呼ばれる肩関節の痛み、手首、足首、肘、膝などの関節痛まで、すべては共通した原因によるひとつの症候群だということです。従来の医学が診断してきた、表4に示す疾患のすべてがTMSだと考えてください。

-手首の痛みと腰痛が同じ病気だなんて、にわかには信じられませんね。

◆もっともです。しかし、これはサーノ博士の長い臨床経験の中から導かれた結論なのです。

サーノ博士は現在、ニューヨーク大学医学部臨床リハビリテーション医学の教授ですが、世界的にも有名なハワード・ラスク・リハビリテーション研究所のスタッフ・ドクターでもあります。コロンビア大学医学部を卒業したのち、コロンビア・プレスビテリアン小児病院の小児科でレジデンシー・トレーニング(専門医学実習目インターン終了後、さらに病院内に宿泊して臨床医学を学ぶこと)を受けています。

そして、ニューヨーク大学医療センターで特別研究員としてリハビリテーション医学を修め、1965年にハワード・ラスク・リハビリテーション研究所の外来部長に就任しています。ここで注目しておいてほしいのは、サーノ博士はもともと小児科医だったという点です。

博士はのちにリハビリテーション医学に取り組むようになってから、いくつかの素朴な疑問に悩まされるようになりました。

まず、なぜ検査所見と臨床症状が一致しないのかという疑問です。

小児科医だったころとはちがって、リハビリテーションの臨床現場では、あらゆる筋骨格系の痛みを訴える患者を診なければなりません。自分の専門外のことは標準的な現代医学の教科書にのっとって診察を進めるしかないわけですが、現実は教科書の内容とは大きくかけ離れたものだったのです。

-たとえば?

◆たとえば、腰痛は主に腰椎や椎間板の老化によって起こるとされていますが、患者が訴えている症状は、レントゲン写真に写る病変とはまったく関係のない部位に現れているのです。ひどい変形が上部腰椎にあるのに痛みは下部腰椎付近にあったり、右側にヘルニアがあるのに芹坐骨神経痛があったりという具合です。

しかも病変の異常の程度と、痛みの強さが一致していないのですから、一層わけがわかりません。ほんのわずかな変形でも動けないほどの激痛に苦しむ患者がいる一方で、みるも無残な変形がありながら軽い症状ですんでいる患者もいました。何かに神経が圧迫されて坐骨神経痛が起きているはずなのに、その何かはどこを探してもみつかりません。

もちろんその逆の場合もあり、変形が強かったりヘルニアが大きいにもかかわらず、軽い坐骨神経痛しか訴えない串者がいました。そして何よりも不思議なのは、検査でみつかった病変に変化がないのに、治ってしまう患者がいることです。

他にも不良姿勢、運動不足、外傷、骨の先天異常などが腰痛の原因だといわれていました帽いくら医学文献を調べてみても、こうした要因による痛みの発生機序は明らかになっていませんでした。

これはいったいどういうことでしょう?目覚ましい発展を遂げてきたはずの現代医学が、間違っているのでしょうか? それともこうした疑問は、サーノ博士だけの妄想にすぎないのでしょうか?

普通のリハビリテーション医なら、「まあ、そんなこともあるさ」という程度で気にもとめないかもしれませんが、小児科医だったサーノ博士にとっては不思議でならなかったのだろうと思います。

-何の根拠もない原因論がまかり通っているわけですからね。その他にも何か疑問点があったのですか?

◆ええ、それはなぜ治療効果が一定していないのかという疑問です。

その当時行なわれていた治療法は、注射療法、超音波、マッサージ、運動療法が中心だったようですが、重症にみえる患者が驚くほど早く治ってしまったり、軽症にみえる患者がいつまでたっても治らなかったりと、まったく予後の見当がつきませんでした。全体的な治療成績をみても、時には効果があるようにみえるという程度にすぎません。

おそらく小児科にいたときは、こんなことはなかっただろうと思います。教科書どおりの診療をしていれば、確実とはいかないまでも、ある程度の予後は推測できたはずです。どんな病気の場合でも、患者が一番知りたがるのは「いつ治るのか」ということです。その肝心な問いに答えられないわけですから、サーノ博士のいらだちは相当なものだったろうと思われます。

そもそも注射療法や理学療法で、医学はいったい何を達成するつもりなのでしょう?どうがんばったところで、変形した骨が元に戻るわけでもなければ、つぶれた椎間板が膨らむはずもありません。結局のところ、こうした治療法が処方される論理的根拠がみつからないのです。

サーノ博士は、「当時の治療は、いらだちが募るだけでなく、気が重くなるような仕事だった」ともらしています。もっとも、こうした素朴な疑問にこだわり続けたからこそ、常識にとらわれないTMS理論を打ち立てることができたのだ、とわたしは思っています。博士がたまたま小児科出身だったことが幸いしたのです。

-それでサーノ博士はどうしたんですか?

◆従来の診断学や治療学への不信感を募らせながらも、患者を詳しく診察しているうちに、彼らの痛みは骨や軟骨から生じているのではなく、筋肉に生じていることに気づきました。これが「緊張性筋炎症候群」に「筋炎」という語を使った根拠になっています。

やがて、博士は興味深い事実を発見することになります。患者の病歴を調べ直しているとき、筋骨格系疾患に苦しむ患者の多くは、緊張性頭痛、片頭痛、胸やけ、胃酸過多、食道裂孔ヘルニア、胃十二指腸潰瘍、大腸炎、過敏性大腸症候群、痙攣性大腸、花粉症、喘息、前立腺炎、湿疹、乾癬、蕁麻疹、ニキビ、めまい、耳鳴り、頻尿、反復性膀胱炎、易感染性といった健康上の問題を経験していることに気づきました。実に、約九割の患者がこれらの病歴を持っていたのです。

-どういうことですか? 何か共通点でも?

◆はい、立派な共通点があります。これらはすべて、「心身症」と呼ばれる病態なのです。

-心身症ってよく耳にしますが、実際はどういうものなんですか?

◆日本心身医学会は、心身症をこう定義しています。

“心身症とは身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的要因が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する。”

要するに、筋骨格系疾患を抱える患者の大部分が、心理的緊張によって生じる病態を経験していたわけです。そこでサーノ博士は、もしかすると患者が訴えている痛みの原因も、心の緊張にあるのではないかと考えました。緊張性筋炎症候群の「緊張性」は、実はこの心の緊張からとって名づけられたのです。

-まさかそんな。腰痛や坐骨神経痛が心身症だというんですか?

そうです。これは表5に示すように、すでに日本心身医学会でも認められていることです。「神経・筋肉系」「整形外科領域」という項目に注目してください。腰痛や神経痛に相当する病態があげられています。

-ずいぶんたくさんありますけど、たしかにTMSに該当しそうなものも出ていますね。

◆ですから、サーノ博士が心身症を疑ったのはごく自然なことで、不思議でも何でもありません。またこの表によって、生涯のある時点で約八割の人が腰痛を起こす事実をうまく説明できるはずです。わたしたちは多くのストレスの中で生きているわけですから、現れる場所や程度に違いはあるにしても、ほとんどの人が心身症を経験する可能性があるのです。

サーノ博士が心身症を疑うようになってからは、次々と新しい発見をするようになりました。まず、何気なく心理的要因を探りながら診察を続けていると、早く治る患者となかなか治らない患者を、ほぼ正確に予測できるようになったのです。予後をまったく予測できなかったころに比べると、これだけでもかなり飛躍的な進歩です。

それだけではありません。痛みの原因が心にあることを認めた患者は、それを否定した患者に比べると、より早く改善していることにも気づいたのです。この発見によってサーノ博士は、筋骨格系疾患に対するもっとも重要な治療的要素は、自分の身体に起きていることを、本人が正確に理解することだと確信するようになりました。そして、それを患者に理解させるための情報は、筋骨格系疾患の「特効薬」になり得るという結論にいたったのです。これがTMS理論のはじまりです。』

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