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中国訪問記|ニュースレターNO.221

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7月29日、帰国しました。中国に出かける前に「スポーツトレーナー虎の巻」が完成し、発刊されたのですが、多くの方の協力を得まして、すでに再版になったようです。ありがとうございます。

また、多くの方から感想もいただきました。この場を借りまして、お礼を申し上げたいと思います。もっと多くの方に読んでいただき、何が一番大切なのか、何がわかって何ができなければならないのか、何かに気づいてもらえれば著者としても嬉しく思います。

さて、7月1日から29日まで、中国大連に行ってきました。大連には知人がいるので、1998年からほぼ毎年4月頃に出かけていました。昨年は北京オリンピックが開催される年だったので、行かなかったのですが、今年は4月にいきました。そのとき、今回のトレーニング基地にも行って、何人かの選手を見たのですが、それが縁で今回長期にわたる滞在となりました。

2000年に訪れたときは、馬軍団の陸上トレーニングセンターになっていて、長距離選手だけしかいなかったのですが、馬さんが引退した後、遼寧省の陸上競技のトレーニング基地になり、すべての種目の選手がいます。現在では、国家代表大連訓練基地、遼寧省単項体育后各人才基地、遼寧省田径培訓中心、遼寧省大連体育学校という4つの名称があり、4つの役割を果たしています。

この時期、中国のどこも暑く、この大連が一番涼しい環境にあるので、中国のトップ選手たちがここで長期の合宿をするようです。中国のナショナルチームの選手たちが合宿する基地が全国にいくつもあり、時期に応じて合宿地を移動していくようです。基本的に、彼らはプロですので、現役を引退するまで合宿地を転々としながら年を越していくようです。

今年は、10月に第11回全国運動会が山東省であるために、ほとんどの選手が10月までここで合宿するようです。コーチも選手も、4年に一度開催される全国運動会で成績を出すことしか考えていない状況でした。

当初は、怪我をした選手のリハビリやリ・コンディショニングについてコーチにアドバイスしてほしいということでしたが、最後は何名かの選手のリ・コンディショニングをしてほしいということになりました。この基地にいて一番感じたことは、常識が通じないということです。

なぜ通じないのか、それはコーチたちが常識というものを知らないからです。また運動生理やトレーニング理論というものをまったく知らないし勉強しようともしないからです。昔、自分がコーチに教えられたことをそのまま押し売りのように、そして強制的に選手にやらせているだけです。

ここには、トレーニング科学というものはまったく存在しないし、彼らはそんなものは信用していません。そんな理窟はどうでもよく、とにかくたくさん練習することが最高の結果を出せることと信じているのです。

それは一時一世を風靡した馬軍団の亡霊を未だに引きずっているのです。そのときと同じコトをしていてそれ以上強くなった選手は出ていないのに、また当時はドーピングの規制もなかった時代で、未だに当時の結果はドーピングによるものだと中国でも言われているのですが、とにかくたくさん走ることによって結果が出たのだから、その結果は否定できないのです。

しかし、それ以上の結果を出すには、それ以上たくさん練習しなければならないのですが、限界までやっていた練習量は、それ以上増やせるはずもありません。増やすことを試みれば故障者が続出することになります。これがわからないのです。トレーニング理論がわかっていればこんなことにはならないのですが、この点はどうにもなりません。

ここの世界は強いものが一番です。レベルが上がれば部屋の暮らしも変わります。テレビ、ビデオ、洗濯機、個室シャワー、冷蔵庫、インターネットまで使えます。それに食事も最高のものが食べられます。しかし、成績が落ちれば、食事も待遇も悪くなり、いわゆるランク付けされているので、格下げになります。

遼寧省は昔から陸上競技が強かったのですが、レベルの低いコーチばかりになったことから、今ではいい選手が他の省に流出してしまって、おまけに陸上人口も減っているといいます。

4年後の第12回全国運動会が遼寧省で開催されるので、管理者達も頭を痛めているようです。遼寧省は、からだの大きな選手が多いので、投擲種目が強い。リッパなからだをしているのですが、バランスが悪い。それはトレーニングがある意味力任せのものが多いからです。

筋力トレーニングは、ほとんどが専門的筋トレで、基礎的な筋力の強化が忘れられている感もあります。特に目に付くのは投擲選手の体幹部の弱さです。脊柱を支える深部の腹筋や背筋があまりにも弱い。外側の大きな筋肉は強いのですが、このことが腰痛を訴える選手が多い原因と考えられます。

また、腸脛靭帯の問題を抱える選手も多くいました。その選手の多くは、腰がねじれていました。選手に聞くところによると、左右対称的なトレーニングはまずやらないようです。ハンマー投げの選手も、逆回転での回転などした事もないといいます。トレーニングでも片側を強調するようです。

後一つ気づいたことは、ほとんどの選手のシューズが小さく、ハンマー足趾が多くみられたことです。投擲の選手にいたっては、シューズの横幅がぜんぜん合っておらず、そのシューズを履くだけでバランスを崩すこともありました。シューズについては、無頓着です。

アイシングについては、ほとんど理解できておらず、なぜ冷やすのか、どれくらい冷やすのか、どんな方法で冷やすのか、まったく理解されていませんでした。冷やすことの習慣のない国民性によるものです。この点については、かなりアイシングの意味を理解させることができたと思います。

ここの基地では、投擲と長距離・マラソン・競歩を重要視しているのですが、短距離と跳躍は今ひとつです。特に短距離はひどい。走り方の問題が大きいように思います。リラックスして走れない。腕にも脚にも全身に力が入って走っています。

スプリントの理論は、つま先で地面を叩きつけることのようです。そのような動作をするために、からだが進んでいかないのですが、理解できないというよりもスプリント理論が間違っているということです。短距離も跳躍の選手も、いずれもつま先立ちを強調して歩いたり走ったりしています。

それがブレーキになっていることに気が付かないのです。またそのために、痛みが発生していることにも気が付かないし、指摘しても直そうとしないのがコーチです。

選手はすべてコーチに服従なのです。技術といいながら、今の技術がこれでよいのか考えないし、もっと他に良いものはないのかも考えません。当然選手も考えないし、コーチも考えさせようとはしません。しかし、頭のいい選手は、常に考えています。その結果、コーチの考え方に疑問を感じると遠慮なくクレームを出します。それにコーチが応えられなければ、その選手たちはコーチを無視します。

その結果、優秀な選手は、コーチがいないで自分で考えてやっていることになります。この国のアスリートたちがまともなトレーニングや練習をピリオダイゼーションにしたがってやれば世界チャンピオンやオリンピックチャンピオンがたくさん出ると思いました。

また、この国ではオリンピックや世界大会よりも4年に一度開かれる全国運動会の方が大切なのです。そのせいか、国内大会なのでドーピングもお構いなしにやっていた経緯があります。

それが北京オリンピック開催が決まってから、ドーピングが厳しく取り締まられるようになり、国内大会でも厳しいチェックがあり、基地にも不意に検査が入るといいます。過去にドーピングで選手を育ててきたコーチたちにとっては、薬以外に選手を育てる手立てがなくなったというのも、中国の陸上会が強くなれない要因だと考えられています。

このような悲しい現状とは反対に、もっとまともな指導者の育成に取り組もうとしている現状もあります。

今回お会いした洪さんは中国陸上会の指導者のトップに位置する方のようで、またまともな頭の持ち主なのでいつの日かスポーツ科学というものを考えるコーチが増える日がくると思います。問題は、結果だけが問題という中国スポーツ界の現状です。

何をしてでも勝てばお金が入り、家や車も手に入り、一生安泰なのである。それは、世界大会やオリンピックの結果のみならず、全国運動会の成績も同等であるということです。8月に世界陸上があるのに、まったく関心がありません。10月の全国運動会しか頭にないのです。

それは、選手にとってもコーチにとっても、自分の将来が決まる大切な大会なのです。

なぜ大切かというと、優勝すればコーチも選手も多くの褒章がもらえるからです。コーチは車とマンション、現金20万元が国からもらえるといいます。それだけではなく、省、市、県、学校などからも別に褒章がもらえるようです。選手にはどれほどの褒章がもらえるのかわかりませんが、コーチ以上だと思います。

数名の優勝者を出せば、車もマンションもいくつもらえるということです。コーチたちは、それを売って現金にするそうです。だから、コーチたちは、とにかく何をしてでも4年に一度の全国運動会手に出して優勝させたいと願うわけである。結果を出せないコーチは、逆に首になるのです。

コーチも契約制のようで、最低3年、長くて6年の契約をするようです。選手もコーチも優勝すれば、他の省から高額条件でスカウトされるようです。通常の試合でも、賞金が出るようです。

基本的に、皆プロだから、收入は賞金によるということです。だから、世界陸上が8月にあるのに、だれも気に掛けていないのです。

今回の長期にわたる中国滞在については、ホームページで「中国訪問記」として掲載しますので、興味のある方は読んでみてください。

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