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骨・軟骨を強くする|ニュースレターNO.269

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Sportsmedicine 2011. No.127で「骨・軟骨を強くする-発生、進化、代謝、再生などに関する正しい知識」という特集記事がありました。骨・軟骨について正しく理解できるとともに、トレーニング指導に役立つ情報が得られるものでした。

また、解説している東京大学大学院工学系研究科教授(医学系研究科兼担)東京大学医学部附属病院の鄭雄一氏の著書:『骨博士が教える「老いない体」のつくり方』(ワック株式会社2010)もたいへん興味深い内容のものです。パーソナルトレーナーにとってトレーニング指導する上で必須の知識が書かれているので、著書と共に目を通していただきたいと思います。今回は上記の特集記事から抜粋して紹介したいと思います。

『鄭:まず、現代において、何を気をつけなければいけないかということですが、情報が多すぎることです。情報が多いというのは、一見いいことのような気もします。しかし、よく考えると、それがすべて正しい情報であればいいのですが、誤った情報も入っていて、そのなかから正しい情報をみつけなければいけないのです。

情報の選択がきちんとできないと情報はたくさんあるのですが、結局なんの役にも立たない誤った情報「ガセの情報」ばかりをつかむということになります。

ガセの情報をつかむとそちらに時間もお金もとられてしまって、果ては、間違った健康法を行うと健康までとられてしまって、人生が台無しになってしまいます。これが、私が一番今の世の中で危惧しているところです。このような情報の洪水のなかできちんと健康や老化に関する正しい情報を選択できることが大事だと思っています。そのためには対象に対して基礎的な知識があるということと、論理的に考えられるということ、この2つがないとダメかなと思います。

-それは、情報全般に言えることですね。

鄭:そうです。これはすべての事柄についてそうだと思っています。次に統計の話になりますが、日本は高齢化先進国で長寿国(2006年の統計で女性1位、男性2位)で、100歳以上の人については最近問題もありましたが、2007年の統計では32,000人くらいで、この10年で4倍になっています。

しかも65歳以上が人口の22%というすごい数になっています。65歳で“高齢”というのももはや当てはまらないと思います。そして高齢化とともに病気も増加してしまい80歳で平均8つもつと言われています。65歳すぎから健康で何も病気がない人というのは急激に減り、80代後半になると半数以上が要介護・要医療になります。

ですから、単に年齢の数字を増やしてもダメで、活動的な健康寿命を延ばさないといけない。そのときに、骨・軟骨は健康寿命にとってとても大事なものです。これが骨・軟骨の位置づけです。

ガンや脳卒中、心疾患などについては、「死ぬ」ということがクローズアップされて、注目されているのですが、実は骨・軟骨の疾患はクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を下げるという意味では非常にインパクトの強い病気です。老化に伴う有名な病気としては、骨粗鬆症、歯周病、変形性関節症があります。

とくに若い人には、骨がちょっと減ったくらいどうということはないんじゃないか、骨折しても治るからいいじゃないかと言う人がいるのですが、高齢者に関しては、それはとんでもない間違いなのです。それは廃用症候群が起きてしまうからなのです。廃用症候群というのは長期間安静にしていると、すべての臓器で機能が落ちてしまうのです。筋肉、関節、骨、心・肺、消化管、神経など、だいたい1ヵ月くらい安静にしているとすべての機能が低下してしまいます。

-筋肉は早い。

鄭:筋肉は非常に早いです。骨も早い。代謝が早い臓器ほど安静による機能低下は早いようです。逆に関節は遅いです。もともと軟骨は代謝が遅いですから。若い人であれば機能のリザーブがあるので、機能が落ちてもだましだまし生活をしながら、もとに戻せるのですが、高齢者はリザーブが少ないので、廃用症候群になってしまうと、そこから歩けなくなってしまいます。

歩けなくなるとさらに心身機能が低下してさらに動けなくなってしまって、悪循環から抜け出せなくなり、そのまま寝たきりになってしまうのです。これは非常におそろしい状態です。アメリカの統計ですが、寝たきり老人の多くは5年以内に亡くなってしまうというデータがあります。

さらに80歳以上に関しては1年以内に亡くなってしまうという統計が出ていて、寝たきりはガンに匹敵するような病気だと思います。だから、これを防ぐのが、健康や運動の意味ではないかと思います。

-とくに運動ですね。

鄭:運動はすごく大事だと思います。』

『鄭:次に生理的老化と病的老化から考えてみると、最初に述べたとおり、生理的な老化は避けられません。それがどういうふうに起こるかを示したのが、図13です。骨量の変化をグラフで示したものですが、点線が女性で、太い線が男性です。女性のほうが早く第二次性徴期に入るので、そのときのホルモンによって骨量がぐんと増えて、だいたい20~40代でプラトーになります。そして閉経になるとガクッと落ちて、そのあと緩やかに落ちます。

男性の場合は、第二次性徴がやや遅くなりますが、男性ホルモンがありますので、女性より大きく骨量が増え、最大骨量も男性のほうが多くなります。しかし、やはり同じ年代のころからだんだん落ちていきます。男性では急激に落ちるフェーズはありません。

グラフ内の横の線は骨折閾値で、これ以上骨が減ると力学的強度が下がって、骨折しやすくなるという限界値です。男性は高齢になっても普通はそこまで骨量が低下しませんが、女性は80歳を超えたくらいになると、骨折閾値にかかってきます。

ですから、たとえば若いときに過激なダイエットをしたりして、きちんとご飯を食べなかったりすると、グラフの線が全体的に下がってしまい、60代くらいで、もう骨折しやすくなってしまう。男性も同じです。男性もきちんと栄養を摂れなかったり、ホルモンの異常があったりして、最大骨量が下がってしまうと、緩く落ちてきても、骨折閾値より骨量が低下し、骨折しやすくなってしまいます。

女性の場合は閉経でガクッと落ちてしまうと言いましたが、男性でも女性でもホルモンの異常があったりして、途中で急激に落ちるようなことがあったりすると、生理的な老化の基本的な経過は変えられないので、骨折しやすくなってしまう。最大骨量の低下、あるいは骨量減少の加速などがあると病的な老化になり骨折しやすくなるということを示した図です。』

『鄭:では、軟骨はどうかというと、軟骨もやはり生理的に老化します。だんだん歳をとってくると筋力が低下してきて、そうすると力を逃がす部分がなくなってくるので、直接関節に衝撃がきて、そういったメカニカルストレスが増えます。また、歳をとってくると関節の水分が低下したり有機成分も変化したりしてきます。

これらが複合的に働いて、変性は避けられません。しかし、これは緩やかなものです。病的な老化のリスクファクターがいくつかあります。まず「肥満」。軟骨の場合はとにかく肥満が大敵です。四六時中、膝の関節には過剰なメカニカルストレスがかかるので、変性が促進します。

それから肥満については、脂肪そのものから何か悪玉因子が出るという説があって、まだよくはわかっていないのですが、あり得る話だと思います。とにかく一番問題なのが肥満で、過剰なメカニカルストレスがかかりますので、減量は絶対に必要です。

それから「運動」ですが、筋力が低下するとメカニカルストレスが増大します。ですから筋力を保つための適度な運動はしたほうがいいです。過度に安静にするのはダメです。それから関節のケガは直接関節を損傷したり、靱帯が断裂するとそれで過剰なストレスがかかるようになります。

過激な運動はどうか。基本的には運動そのものによる影響はどうかというのはわかっていないのですが、関節のケガの危険があるので、歳をとってからあまり捻ったり、飛び跳ねたりというのはやめたほうがいいですね。バスケットボール、ラグビーなどは、あまり高齢者には勧められません。逆に過度の運動不足もダメで、宇宙飛行士でわかっているのですが、宇宙に行って重力がかからないと関節は薄くなってしまいます。

-関節が薄くなるというのは軟骨が薄くなる?

鄭:そうです。軟骨の部分が使われなくなるので、軟骨が萎縮してしまうのです。食事でどうにかなるというものはありません。サメの軟骨系の話は、何もエビデンスがない。やはり体重を適度に落として、適度に運動する、この2つがすべてです。

-栄養や食事は?

鄭:それは普通にしていれば大丈夫です。何もしなくていいということではないですが、特別にこれをやると軟骨が増えるということはありません。

-ヒアルロン酸の注射は?

鄭:注射は直接軟骨に到達しているのでそれなりの効果があるようです。しかし、食べるのはまったく意味がないと思います。』

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