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廃用症候群|ニュースレターNO.278

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パーソナルトレーナーへのクライアントの依頼の目的は、減量と体力つくり、からだの痛み・不快の解消が主なものだと思います。そしてクライアントの多くの方が年配者だと思います。特に、年配者の体の痛みや不快の問題は、長年のからだの使い方の悪さからくるバランスの崩れが主な原因のように考えられます。

そのような場合、直接的に鍛えると言う前に、からだのバランスを取り戻すために身体調整が必要になります。からだ自然体に戻った後、いつまでも元気に行動できるからだつくりといったことが目的になるのではないでしょうか。いつまでも若々しくいたいというのは、誰しもの願いではないでしょうか。

今回紹介するのは、鄭雄一著:「老いない体」のつくり方(ワック文庫2010)です。加齢に伴う問題として考えておかなければならない「廃用症候群」について分かりやすく解説されています。年配者のトレーニングの目的がこの廃用症候群対策にあると言えると思います。パーソナルトレーナーの方たちには、ぜひ原著を読まれることをお勧めします。

『高齢化に伴って増加する病気の中でも、われわれが日々運動したり、食事をしたりすることに欠かせない「運動器」と呼ばれる骨や軟骨などの病気は、爆発的に増えています。高齢化に伴う骨の病気で最も有名なのは骨粗鬆症です。現在、日本において、骨粗鬆症に罹っている方の数は、人口のなんと10%近く、1000万人を下らないと推定されています。「国民病」と言っていい数値であると思います。

骨粗鬆症は、難しい漢字を書きますが、要するに「骨がすかすかになった状態」という意味です。正確には、骨の量と質が低下して骨が脆くなり、そのために骨折の危険が高まった状態のことを指します。例えば、骨の量が二分の一になると、骨の力学的強度は四分の一になります。

われわれの骨の量は、20~40歳くらいに最大となり、その後、加齢とともに緩やかに低下していきます。さらに、女性では、これも老化の一種である閉経(月経が止まること)の後に、女性ホルモンであるエストロゲンの低下に伴って骨の量が急激に減少します。骨の量の低下がある一線を越えると、骨が非常に脆くなり、ちょっと転んだりしただけで骨折してしまうようになります。

骨折するくらいどうってことないのでは、と若い方は思うでしょう。事故や激しい運動などで、骨折を一度は経験された方も多いと思います。著者も、中学生のときに運動会で「俵取り」という、読んで字のごとく百キロを超える砂の入った俵を奪い合うかなり野蛮な競技をしているときに、十何人かの同級生の下敷きになって、左足の腓骨を骨折しました。

その激烈な痛みはともかくとして、若いときであれば、骨折を整復(折れてずれたか骨の位置を元に戻すこと)して、ギブスをはめて、松葉杖をついて1ヶ月もすれば、仮骨という軟骨と骨とでできる組織ができて折れた部分をつないでくれるため、ギプスをとって徐々に体重を掛けて歩けるようになります。ところが、高齢者の骨折は、このように簡単にはいかないのです。

まず、年を取ると、若いときのように骨折はすぐには治りません。老化に伴って、体の治癒する力が落ちているからです。そのために、仮骨の出来が悪くなり、折れた部分がなかなかくっつかず、体重をある程度掛けて歩けるようになるまでに、長い時間がかかるようになります。

少々時間が長くかかっても、結果的に治るのであれば大した問題ではないのでは、と思われるかもしれません。しかし残念ながら、これは時間の長短だけの問題ではありません。骨折が治癒するのに要する時間が長くなり、その結果としてベッドに寝ていて動かない時間が増えると、動かないこと自体によって、身体や精神に対するさまざまな悪い影響が引き起こされるのです。

長期間の安静で心身の活動性が低下することにより引き起こされる病的な状態のことを、専門の言葉で「廃用症候群」と言います。
「廃用」とは要するに「使わなくなる」ということです。たとえば、体を動かす筋肉に関しては、骨折によって長い間ベッドに寝かされて運動をしないと、健康な人であっても、1週間の安静で10%以上筋力が落ちると言われています。

関節に関しては、安静により、関節がだんだんと硬くなっていき、3週間ほどで曲がりにくくなります(これを拘縮といいます)。

先ほど述べましたように、私は中学生の時に腓骨を骨折して、1ヶ月ほどギプスをつけました。この際に、足首の関節を一緒に固定しました。強制的に、関節を安静にする状態を作り出したわけです。

1ヶ月後にギプスをとると、筋肉はやせ細り、関節は石のように硬くなって、全く動かなくなっていました。このように萎縮した筋肉を元に戻し、拘縮した関節を、再び自由に動くようにするまでには、若かった当時でさえ、数ヵ月もかかりました。

安静により、骨を壊す役割を担う「破骨細胞」の活動性が亢進し、骨は吸収されて速やかに減っていきます。一番極端な例では、無重力状態で過ごす宇宙飛行士の骨が速やかに減っていくことが、これまでの研究から知られています。

安静により、心臓や肺の機能も落ちます。健康な人であっても、3週間ほどの安静で肺活量が10%以上落ちてしまいます。消化管の消化吸収機能も落ち、食欲が低下し、便秘しやすくなります。また、神経系においては、運動による刺激が減ることで、平衡感覚が低下するだけでなく、精神活動が低下して頭の働きが鈍り、いわゆる認知症のような状態が促進されます。

このように、骨折が原因で運動しないことが、さまざまな身体的、精神的悪影響を引き起こします。たとえ健康な人であっても、安静により上記のようなさまざまな機能が落ちるのですが、もともと老化によって基礎的能力が低下していて、機能的な余裕の少ない高齢者においては、安静による悪影響である廃用症候群が、より顕著に出やすくなっています。

その悪影響は高齢者のさらなる活動の低下をもたらし、それがさらに廃用症候群を悪化させるということで、元に戻ることのできない負のスパイラル(悪循環)が形成され、そのまま寝たきりになってしまうことが多いのです。

日本における高齢者の寝たきりの原因の約10%が、骨粗鬆症に起因する骨折がきっかけであると推測されています。寝たきりは、QOLにとって最悪の状態であると言えます。さらに恐ろしいことに、寝たきりになると5年以内に多くの方がそのまま肺炎などで亡くなります。特に80歳を超える高齢者では、なんと1年以内という短い期間に、多くの方が亡くなってしまいます。

以上の話からわかります通り、高齢者における寝たきりは、単なる状態ではなく、命を奪うまでに進行する力を持っています。したがって、命に関わる病気と同等と捉えることが妥当だと思います。そのような重大な病気として注意し、積極的に対処することが重要ではないかと思います。』

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