ランニングをしていても、気持ちよく前に進む感覚が得られない。そんなときは坂道をうまく利用すると気持ちよく走れるようになります。
高校で陸上長距離をしている選手で、その選手に走り方の指導をしていて感じたことが、走っているけど着地をするたびに止まるような瞬間があり、接地時間が長い。
腕の振りも硬く、前にどんどん進むような感覚がなく、ストライドも狭い。選手自身もこのような感覚があるそうで、どうすれば改善できるのか悩んでいたそうです。
全国でもトップ3に入る実力があり、持っているものは素晴らしく指導している時も、素直に聞き入れてくれ、今回の指導がひとつのきっかけになればうれしく思っています。
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指導前の課題について
選手の走り方を見て、前もって親御さんから情報をいただいていたり、動画を見て確認をしていましたが、以下のようなポイントが気になりました。
- 接地時間が長い
- 上半身や腕の動きが硬い
- 脚がスムーズに回転していない
- 左右にブレながら走る
- 全体の動きが写真で一コマずつ撮ってみているように見える
イメージとしては一生懸命さが感じられ、動きの硬さが目立っていました。
指導前にまず走ってももらいランニングのフォームを見た後、現在の走り方のイメージを聞いたり、本人が日頃どのようなことをしているのかを確認し、現在の走り方の考え方を聞いていきました。
そしてそこからこちらが走り方の考え方について説明し、現状と課題点について実践しながら確認するような形でセッションを行っていきました。
最後は脚の回転もスムーズになり、見ていても柔らかさというか、気持ちよさが伝わってきて、今回の指導では今までもランニングのイメージを変えることができたのではないかと感じています。
まだまだこれからですが、今回の指導で感じたことをまとめていきたいと思います。
立ち方、歩き方、走り方へと進む
まず選手の頭の中を整理し、現在選手自身がどのように考えているのか、またどのようなところに課題点があるのかを整理した上で、立ち方から指導していきました。
選手の中では、踵で立つというイメージがあったそうで、日頃からそういう意識も持っていたそうですが、実際に体重支持ポイントを確認するとつま先に体重がかかってしまっていました。
まずフラットに体重がかかるように、下駄を履いた状態で簡単なエクササイズを行い、足裏感覚を教育していきました。
すると足裏全体で立つ感覚が少しずつ出てきて、上から抑えると踵に抜けるような感覚が出てきました。このようにまずフラットに立てるようにするところから開始し、次に歩いていきました。
歩き方については、脚を前に運ぶのではなく、重心を運ぶ感覚を得るために、まずは重心を感じ、そこからそれを前に移動させるということを繰り返し行っていきました。
これまで脚を前に出すというイメージはなかったものの、動きとしては脚がすぐに前に出てきてしまうので、脚をリラックスさせ、重心を前に運ぶことで自然と脚が出てくることを感じてもらい、この感覚をその後の走り方に活かしていきました。
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坂道を利用して気持ちよくランニングをする
脚の動きが硬いとピッチも上がりませんし、ストライドも広くなりません。
歩き方を指導した後は、坂道を利用してリラックスして気持ちよく走れるようにしていきました。
ここでの一番の目的は、リラックスをすることで脚がスムーズに動くことを理解することと、リラックスして走ることでストライドが広くなり、気持ちよく大きく走れるようになるため、その感覚をインプットすることです。
力の入っている箇所をリラックスさせる
まず行ったのは、脚をどうこうするのではなく重心を前に移動させ、力の入っているところをひとつずつ抜かせるところから入っていきました。
直立の状態から、身体を前に傾けていき坂道ですので、後はリラックスすると転がるように走っていきますが、最初行ったときは身体を前に傾けるとすぐに脚が出てきてしまい、身体が前に倒れませんでした。
これを何度も繰り返し、自分で脚を出してしまわないように力を抜かせていくと、脚がスーッとリラックスした状態で出てくるようになっていきました。
次に気になったのが足首で、マラソン選手などの足首の使い方は、固定的に使う考え方もありますが、今回はフラット着の感覚をインプットするために足首の力も抜けるようにリラックスするように指示しました。
ぶらんぶらん状態で着地をすることで、フラットに着地する感覚が出てきて、これができるようになった時点で、最初に感じていた接地時間の長さが気にならなくなってきました。
上半身もぶらんぶらん状態で、ただ、頭を前に前に運ぶようなイメージで走り、リラックスをしているので加速する感覚も得られ、ストライドも自然と広くなっていきました。
この辺りで選手自身は課題としていた進む感覚が出てきて、気持ちよく走れるようになってきたそうです。
その場でお尻を蹴るエクササイズを行う
坂道を利用して、気持ちよく走れるようになってきたので、次にその場でお尻を蹴るようなエクササイズを行い、脚の回転がスムーズになるようにしていきました。
長距離選手ですので、走っているときに過度にお尻を蹴るようなイメージを持ってしまうと、そこに硬さが生まれ、無駄なエネルギーを使ってしまうためマイナスになってしまいます。
ただ、エクササイズとして行うことで脚の回転をスムーズにすることができるため、これを活用していきました。
ここで得た感覚を実際に走っているときに活かしていきましたが、うまく脚が回転するようになり、スムーズさがより出てきました。さらに脚の回転がスムーズになったことでさらに本人の中でストライドが大きくなった感覚が得られたそうです。
鼻をまっすぐに運ぶ
ここで少し気になったのは、頭の位置や身体のブレで、最初に比べると左右のバランスも良くなり身体もブレなくなってきましたが、頭が左右に振れるように走っていました。
そこで、走っていく先にひとつの目安を作り、そこに向けてこの選手の場合は鼻をまっすぐに運ぶように走ってもらいました。すると左右への頭のブレも改善され、選手も着地の際に両脚均等に着地できている感覚も出てきたそうです。
腕の振り方を確認する
高校で指導を受けたときには、肘をまっすぐに引くということを言われていたそうで、その他に腕の振り方について指導を受けているそうです。
その影響からか、肩が軽くすくみ、非常に硬さがありその場で腕の使い方について説明し、リラックスして振れる腕のポジションを見つけ、そこで腕振りを行っていきました。
リラックスして振れるようになったので、そこから走り、腕でリズムをとるように走ってもらうと肩周りの緊張も改善され、スムーズさが出てきました。
平地をランニングしてみる
このように坂道でランニングをし、部分的な改善も加えつつ走り方の改善を行い、最後に平地に戻って最初と比べるように走っていきました。
選手自身の中では、楽に進める感覚が一番出てきたそうで、着地や身体のブレなどの変化も感じてもらうことができました。リラックスをして走れるようになり、足もスムーズに回転し、踵がお尻の方まで自然と上がり、非常にきれいな脚の回転に見えました。
課題である前に進む感覚を得ることも得られたそうですが、全体のイメージとしては当然すべてを改善し完璧な状態にはなっていませんし、僕自身の技量もありますので、今後も課題として感じた箇所を修正を重ねていきたいと思います。
全体を通しては、選手自身は走るということについてイメージを変えられたそうで、リラックスして走る方が進む感覚が得られ、あれこれ意識しなくても身体のブレや左右差を修正できることを理解していました。
今後も選手の感覚を擦り合わしながら改善していきたいと思います。
最近感じること
全然関係のない話ですが、今夏休みだったり、部活動の節目の時期でもあります。
最近学生の親御さんから「子供の指導を・・・」ということでご連絡をいただき、実際にセッションを行っていますが、指導のときにはそばにいらっしゃいます。
先日も炎天下の中でお待ちいただき、こういう親子の関係を見るとすごく考えるものがあります。お子さんの競技レベルも全国大会で活躍されていたり、県の代表であったりとレベルも高く、お子さん、親御さん、一緒に目指すところに向かっています。
自分自身が高校野球をしているときなど同級生のママ・パパに良くしてもらって、自分のところは一度も顔を出すことができませんでした。
自分の親の事情は自分が一番分かっていますが、セッションをする中でも特別思うところもあり、少しでも力になれればと思いますし、何か変われるきっかけが提供できればと思います。
自分は高校野球をしながら新聞配達をして、道具を買ったりしていましたのでわかりますが、親御さんの支えの中でスポーツができ、今があります。お子さんだけではなく、親御さんも送り迎えをして本当にきついときもあると思います。
そんなしんどい想いが一番報われるというか、晴れる瞬間はお子さんが一番いい成績を残せたり、結果を残したり、悔いのない競技生活を送ることを見届けたときだと思います。
少しでもその一瞬の時間の中で、力になれるようにサポートできればと思っています。それぞれが次のステップに移れるように自分自身も妥協せずに進み続けたいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今日は、坂道を使ったランニングで走り方を変えたり、感覚を変えることについてお伝えしていきました。
坂道を使うとボールが転がっていくように、リラックスすると勝手に加速し、ストライドも大きくなり、気持ちよく走ることができます。この感覚をインプットし、平地で走ると気持ちよさが残ります。
この感覚で走ることで平地での走りも良くなっていきました。
走る基本はリラックスをすること。過度に意識を向けず、気持ちよく走ればおのずと結果も良いものになっていくと思います。
これからも改善を重ねて、より良い走りができるようにサポートしていきたいと思います。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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