訳書「スポーツ競技学」について|ニュースレターNO.078

ようやくマトヴェーエフ氏の最新の著書である「スポーツ競技学」が完成いたしました。本当に嬉しく思います。

2001年の秋から翻訳を開始し、昨年の春には一通り翻訳も完了したので、秋には出版できると思っていましたが、出版を引き受けていただいた(有)ナップの長島さんから、この原稿では一般に理解しにくいものです、という御指摘を受け、もう一度文章を読んで、すぐに理解できるものなのかという点から修正・訂正に取り掛かりました。

その際に、根本的に翻訳が間違っていないのか、文章的におかしなところはないのか、その点に関してはすべて鳴門教育大学の渡邊謙先生にチェックしていただきました。

結局このような細かなチェックをしていったことから、大量に不明な個所がでてきてしまい、すべて渡邊先生の手にゆだねることになり、大変なご迷惑をおかけするとともに完成までに長い時間を要してしまいました。

このことが、逆に幸いしたというか、渡邊先生の見事な翻訳となり、わかりやすいものに仕上がりました。

とは言うものの、マトヴェーエフ氏も言われていましたが、大学院生以上のレベルを対象に書かれたものですから、基礎知識がなければ当然理解できないと思います。

そのために、原著のタイトルは「スポーツ原論とその応用」となっています。

マトヴェーエフ氏は、選手を育成する指導者にとって必要不可欠なことが書いてあり、この本が私のこれまでの研究成果を集約したものであると語られました。

しかし、「スポーツ原論とその応用」というタイトルでは、かたい気がするので、ほかにタイトルはつけられないかと伺ってみたところ、マトヴェーエフ氏は「Sports:Theory and Practice」はどうかと言うことになりました。

なぜ「スポーツ」という言葉にこだわるのか、それは読んでもらえばわかりますが、われわれが考える単純な「スポーツ」という考え方ではなく、非常に広範囲で深い考え方が「スポーツ」にはあるということです。

まさに「スポーツ哲学」の領域といえるでしょうか。

その中に「競技」があるわけで、スポーツそのものについて深く理解することが、選手育成の基礎になっているということです。

このような考え方にたって、選手を育成するのが指導者であるということです。スポーツや競技の中でいろんな状況が考えられます。

その中心的な命題は、スポーツパフォーマンスを向上させるということですが、その状況で起こりえるあらゆる状況に対してどのように対処していけばよいのか、それを解決する上でのまさに教科書になっています

私は、校正を通して何十回と読み返したわけですが、渡邊先生のチェックが入るたびに、「なるほど」「なるほど」の繰り返しでした。

それほど納得できることが次から次へに書かれています。それも指導者が選手を育成する上で悩む問題の解決策になっているのですから、最後のほうの校正では、読むのが楽しくなっていました。

これまで何冊か翻訳ものを出版しましたが、ここまで校正を重ねたものはありませんでした。

結局は、渡邊先生にほとんどやっていただいたようなものになりましたが、私としては100%チェックしていただきたかったと思っております。

しかし、皆さんに読んでいただいて、再版になるようであれば、また再版を重ねていけるようになれば、より細部にわたって渡邊先生にチェックしていただけることになっております。

このような専門書は、基礎的な知識はもちろんですが、実践の経験もなければ読んでも理解できないものです。そのために、専門書は売れないのが通常です。今回の訳書もその部類に属します。

そこで私は、ぜひ皆さんに読んでいただき、自分がどこまで理解できるか、自分の現状の知識レベルや理解レベルを図るよい機会にしていただきたいと思います。

数行読んで、考えられることもよいでしょうし、全体を何度も読み流すこともよいと思います。

全体を読み終えられたときに、マトヴェーエフ氏の考え方というものの中に1つの哲学が見えてくれば、どんどん理解が進むはずです。

私も最初の頃は、読んでいてもよく理解できませんでしたが、運良く何度も読み返すことになったので、それからマトヴェーエフ氏の考え方がよくわかるようになりましたし、これまで何度もロシアでお話を伺ったことがよみがえってきました。

「ああそうだ、このことはあのときの話だ」ということになり、実際にはマトヴェーエフ氏が私に話されたことは、本に書かれたことがほとんどであったということがわかりました。

この訳書がスポーツ界において広く読まれるようになることが、私の希望でもありますが、言い換えればそれだけスポーツというものを十分理解した指導者が育つ可能性もあるということです。

この「スポーツ競技学」が指導者にとって、「木を見ず、森を見る」ためのバイブルになることを期待するものです。

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